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編集部だよりVol.8【展示レポート】前田恭兵先生 – 七宝で描く風景 –

七宝作家の前田恭兵先生と九谷焼作家の大家まい先生の二人展が東京・銀座の「花あさぎ」で開催されました。今回のその模様をお伝えします。

前田先生は七宝では難しいとされる立体作品をはじめ、さまざまな技巧を駆使した七宝作品をこれやんにも出品しています。今回はガラスや銀などの素材による反射と風景をテーマにしたreflectionシリーズが展示されていました。取材した場所の風景をもとに制作されています。

「子供の頃から山に登ったりや釣りをしたり、自然のなかで遊ぶことが好きでした。そんな自分が慣れ親しんだ自然の風景を描いていて、絵のなかにいる動物は自分を投影しています」

具象的な表現から、まるで川底にある森のような抽象的な表現まで作品ごとに多彩な自然の表情があります。創作活動をしながら美術の教員としても活躍する前田先生にとっては“教育”も作品制作の大きなテーマだと言います。

「教育という意味で、いろんな実験を取り入れて制作しました。今回は自分が自然のなかで感じた実体験と理想のイメージを融合させています。これまでreflectionのシリーズは水の風景が多かったのですが、今回は山に登ったときに感じる空気感の面白みを表現したいと思いました。どの作品も下絵で森を描いたときは実際に取材した色味にかなり近く、そこから色味を変える実験を繰り返しました」

話を聞いているとまるで絵画の制作の話のように聞こえますが、七宝はガラスと釉薬、金属で作られています。釉薬を火で溶かして固めて、ガラスを重ねることで生まれる色彩と質感。その実験を繰り返しながら制作されています。

「釉薬は自分がコントロールをできるところと火が勝手にやってくれる仕事の合間を探すイメージです。結果がわからないところが面白くて、試行錯誤をしながら作ることで、その作品が次の制作の糧になっていきます」

風景の作品のなかに一点、前田先生が大好きな魚をモチーフにした作品もありました。鱗のきらめきを銀で見事に表現されています。リアルな尻尾の部分は銀線で巧妙に作られていて、その素材のもとになる七宝用の銀線を見せてくれました。この線をピンセットと指で形を整えていくそうです。

お話を聞くと色の滲みが釉薬で表現されていたり、光の反射を銀粉などで演出していたりと、さまざまな試行錯誤の跡が読み取れ、見るほどに魅力が深まっていく印象を受けました。ちなみに今回、一緒に展示されていた可憐な七宝焼き作家の大家まい先生も今後、これやんに登場予定です。

「前田恭兵・大家まい 二人展」
会期:2025年1月13日(月)~2025年1月17日(金)
会場:花あさぎ

前田先生のこれやん取り扱い作品はコチラから

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