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園子温と語る芸術談義(その1)。アートがもたらす“優雅さ”

これやん発起人の倉本と旧知の仲でもある映画監督、園子温。
過去には自身で個展を開催するほど、
アートにのめり込んでいた時期もある園監督を迎え、
これやんについて、さらにはアートについて語ってもらった。

一般の家庭にアートを浸透させたい
それが「これやん」の目標ーー倉本

園:これ、関西弁で喋ったほうがいい?

倉本:なんでやねん、喋られへんくせに。

園:いや、久しぶりに美津留さんと喋るからボケといたほうがいいのかなって。

倉本:昔は画家になる勢いで描いていたけど、最近は全然絵を描いたりはしていないの?

園:描きたいけど今じゃないと思っていますね。今はハリウッドに進出することを考えているから、成功してロスに噴水とプール付きでテーブルに白い……いや、そんな豪邸を建てて ”映画やーめた”ってなったら、絵を描きはじめようかなって。やっぱアートって楽しいから、嘘つかなくてもすむじゃない。映画ってどうしようもない役者にでも“素敵だ”って言わなきゃいけないし、なんか政治家に似ていて、嘘もいっぱいつかなきゃいけない。インタビューでもきれい事ばっかりをならべないとダメだし。まぁ、そうはいっても絵を描きながらアートの世界を垣間見たときに、こっちの世界にも闇があるんだなって思ったりはしたけど(笑)。

倉本:僕はアートが大好きだけど専門家ではなくて。園さんが言ったようなアートの世界のちょっと嫌なところを抜きにしても、アートがちゃんと成立する時代を作らないとと思って“これやん”を立ち上げさせてもらったのよ。このやり方なら、既存のアート・マーケットとは違う存在になれるし、この業界に風穴を開けられるんとちゃうかなと思ってね。だから、園さんみたいな人にも作品を出品してほしいと思っているわけ。

園:おおー、なるへそ。ちょっと興味が湧いてきたな。ちなみに美津留さんは「アーホ!」などのテレビ番組でアートを紹介していたけど、なんで今回はインターネットのサイトだったのですか?

倉本:やっぱりいつでも作品を観ることができて、買えるっていうのはインターネットじゃないとできないから。普段は仕事が忙しくて個展に足を運ぶのも難しい人もたくさんいるだろうし、ネットならいつでも見られて、世の中にひとつしかない作品を買える。そうなったら、やっぱりネットだろうなって。

園:(実際にサイトを見ながら)へー、作品が欲しいなって思っても、買うのは抽選なんだ。すぐに買えたほうがいいような気もするけど、そうしたのはなぜ?

倉本:さっきの話にもつながるけど、例えば好きな作家がいて個展に足を運んだとしても、いいなと思った作品がすでに売れてたりすることってあるやんか? だから先着順よりも抽選の方が実は敷居が低いというか。一般の人がアート作品を買うことができる、その機会を平等にするための仕組みなんだよね。

園:まぁ、確かにコレクターやコアなファンがいち早く新作を買ったりすることもあるよね。“アーティストから直接買える”って謳っているけど、それってどういうこと?

倉本:その前にこれやんに参加してもらう作家さんたちは、基本的に本人に直接作品を持ってきてもらって、取材して作品を撮影してサイトに掲載しているのね。ということはコレクターなどが介在していないわけで、アーティストにとっても確実に自分の利益になる。作品が売れたら、アーティストから購入者に直接発送してもらっているから、だからアーティストから“直接買える”って謳っているし、買った人もアーティストをサポートしていると実感できると思うね。

アートともっと親密な関係性を作れたら
“優雅さを取り戻せる”と思うーー園

園:つまり、ネットを介してアーティストのパトロンになれるってわけだ。だから作家が作品を持った写真を掲載しているってことだね。

倉本:そう、インターネットで買えるアート作品って、やっぱり贋作の心配もあったりもするから、作家さんに自分の作品を直接持ってきてもらって、作品と一緒に撮った写真を掲載すれば、その作家さんが作ったという証明にもなるわけやんか。

園:なるほど。(サイトを見ながら)この清水智裕さんの「あの対決」って素朴な感じで好きだね……。あと、それとは別の人のこの絵は何か性的な抑圧を感じるなぁ(笑)。あとこうやってちゃんと纏められた作家のインタビューが読めるっていうのも、これまでにない感じもする。

倉本:作品を売るっていう体裁だけど、実際にはアーティストのことを丁寧に、世の中に紹介したい思いがある。やっぱり作品だけを見るのと、作家がそこに込めた思いとか、作家自身の人となりが分かるインタビューを読んでから作品を見るのでは、深みが全然違ってくるでしょ。その体験を「これやん」を通して、いろんな人に味わってほしいと思ってます。ちなみに園さんはアートを買ったりはしないの?

園:買いたいけど……今は監督業が忙しくてそんな悠長なことはやっていられないですね。でも、ロスに居る知人の家に行くと、一般の家庭にもアートがすごく入り込んでいる印象がある。絵画を買って飾るっていうのが当たり前で、ロスならたいしたことのない街の喫茶店でも絵は飾ってあるけど、日本の喫茶店でそんなところはほとんどないかな。ホテルなんかだと海外を見習って絵を飾ってあったりもするけど、日本はまだ一般家庭にまでアートが浸透していない感じはしますね。

倉本:そう、まさに一般家庭にアートを浸透させたいっていうのが、これやんの目標でもあります。

園:海外だと中流家庭くらいの人は、新人作家の絵をどんどん買っていたりもするよね。もちろん、家に飾りたいって気持ちもあるだろうし、あとは将来、作家が有名になったときに作品の価値があがれば、投資にもなるじゃん。

倉本:「これやん」がそういうことを知るきっかけになれたらいいよね。このサイトはアートのことをそんなに知らない人に向けて作っているから“どんなアートを買ったらいいか分からない”っていう人に向けて、“ここで買えるよ”っていうところからスタートしたいなって。

園:なるほど、それはいい考えだと思う。僕は欧米はアートが生活に溶け込んでいるからこその優雅さがあると思っていて。日本はまだそんな状況ではないけど、アートともっと親密な関係性を作れたら、“優雅さを取り戻せる”と思うね。

倉本:“優雅さを取り戻す”かぁ、ええ言葉が聞けた。それを目標に、これやんをもっと多くの人に認知してもらうために頑張るわ。

その2へ続く

園子温:映画監督。1987年『男の花道』でPFFグランプリを受賞し、1990年には「自転車吐息」がベルリン国際映画祭に正式招待される。1990年代後半には路上パフォーマンス「東京ガガガ」を主宰。『愛のむき出し』(2008年)が第59回ベルリン国際映画祭にて、『冷たい熱帯魚』(2011年)が第67回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に正式出品、古谷実の漫画を実写化した『ヒミズ』(2012年)で、第68回ヴェネチア国際映画祭にて主演二人にマルチェロ・マストロヤンニ賞をもたらした。2015年には『新宿スワン』がヒットを記録。同年に初の個展「ひそひそ星」を開催し、Chim↑Pom主催の「Don’t Fellow the Wind」にて映像インスタレーションを発表、翌年にはワタリウムでも「園子温展」を開催した。映画「ひそひそ星」は第40回トロント国際映画祭にてNETPAC賞を受賞した。

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