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中川翔子と語る芸術談義 アートは“心を柔らかくするためのもの”

倉本と親交のある人物をゲストに迎えてアートについて語る芸術談義。今回ご登場いただくのは歌手・タレント・女優・声優・イラストレーターと幅広く活躍する中川翔子さん。倉本が企画を手がけていたアートのTV番組「アーホ!」のMC役を務めた中川さんにとって、アートの原体験から、アートが社会にもたらす役割など、幅広い視点でアートの魅力について語ってもらいました。

アートのように“心を柔らかくするためのもの”って、
私にとっても必須の栄養素ーー中川

倉本:アートの面白さをもっと多くの人に伝えるメディアをできないかと考えた時に、しょこたんにMCをやってもらう前提で考えたTV番組企画が「アーホ!」でした。

しょこたん:「アーホ!」は本当に大好きな時間で、毎回どんな“アーホ!”と言われる天才に出会えるのか楽しみでした。アートってぶっ飛んだことをやる勇気と、実際に具現化する発想と技術力がないと成り立たないからすごいですよね。番組に出ていたアーティストの方々は“私にはこれだ!”っていう好きなものを見つけているんだから、人類の中でも最高の勝ち組なんだと思います。

倉本:番組をやりながらも、作品を欲しがっている人に届ける手段がないこと、作品を作る側もそういうことに長けているわけでもないから、作り手と受け手をもっと通じさせることができないかと思っていました。それで面白い作品が紹介されていて、それをいつでも見ることができ、買うこともできる。そういった流れを作りたいと思ったのが“これやん”を始めたきっかけでした。

しょこたん:アートのように“心を柔らかくするためのもの”って、私にとっても必須の栄養素だと思います。

倉本:しょこたんがアートに興味を持ったきっかけは何でしたか?

しょこたん:アートというか、絵を好きになったのはものごころが付くよりも前で、親が買ってきた漫画をずっと模写していました。アートのことを知ったのは、藤子不二雄・A先生の短編「マグリッドの石」を読んだときに、マグリッドのことを調べてみたら面白かったので、そこから興味を持ちました。あと記憶に残っているのはスペインのダリ美術館に行ったことですね。もう本当に変で! “これはどうしたらいいんだろう?”って思う作品もありましたが、知らないよりも知ることができて良かったなと思いました。やっぱり10代で好きになったものって一生好きになりますよね。

倉本:そうなんや! 僕もマグリッドがアートの入り口だったから、まったく一緒の流れですね。

しょこたん:そうなんですね! ダリの溶ける時計が描かれた「記憶の固執」など画集で穴が空くほど見ていた憧れ作品の実物を見て“小っちゃ!”って思ったりして(笑)。でも、光の加減とか筆の軌跡が見えて、本当に実物を見るともう、心が永遠に飛んでいくかのようでした。

倉本:実物を見るとアートの威力を感じますよね。アートの作品は所有していますか?

しょこたん:家の廊下には楳図かずおさんの「わたしは真悟」の複製原画が飾ってあります(笑)。後は、シャンソン好きの祖母に幼い頃からシャンソンバーに連れて行ってもらっていて、そのバーに上品な男性のシャンソン歌手であり画家でもある方がいて、祖母がその方の描くパリの絵をたくさん買っていました。今も家にその方の大きな絵が飾ってあって毎日眺めています。もう祖母は会えなくても、その絵を見ておるおかげで、何気ない風景が心によみがえりますね。

倉本:しょこたんが一番最初に自分で買ったアート作品は?

しょこたん:これをアートと呼んでいいのか分かりませんが、中学生の頃に買ったブルース・リーのライフマスクですね。映画「グリーン・ホーネット」マスクをかぶっていたブルース・リーに取り憑かれてしまったんです。中学生の私にとっては高いものでしたが、頑張って買いました。立体だから毛穴まで見えて“すっごい!ブルース・リーがここにおる!”って(笑)。それをずっと眺めてたりしていました(笑)。ここまで語っておいてなんですが、これってアートになるんでしょうか?

倉本:もちろん、それもアートに対する愛情の表現ですよ(笑)。「アーホ!」をやるようになって、アートに対する見方が変わったところはありましたか?

しょこたん:それまでは一般市民の私でも知っている名だたる方々=アーティストだと思っていました。でも、「アーホ!」に関わるようになってから、そういう人だけじゃなく、自分の心を乗せてゼロから物を生み出せる人は、みんなアーティストなんだと思うようになりました。万人受けするものじゃなくても、誰かの心に刺さる物であれば、それってすごいことなんだなって。普通に生きていると、必死で何か作ろうとすることは少ないだろうし、淡々と日々は過ぎてしまうので、作品を作ること自体、とてもエネルギーがいることなんだと、番組を通して改めて思いました。

倉本:“これやん”に出品されているアーティストの作品で気に入ったものはありましたか?

しょこたん:中村圭吾さんですね。やっぱり猫の作品に惹かれます(笑)。

倉本:中村さんはルネッサンス時代の画家に負けないくらいに技術力を追求していて、あえて昔の画法に挑戦していて、さらに油画の技法では難しいとされる小さいサイズの絵で、自身を表現しています。

しょこたん:すごい緻密ですね。これやんのサイトの写真を見る限り全然小さそうに見えないです。

倉本:小さいキャンバスに“こんなにすごく描けるんだ!”って……まるでさっき話題になったダリの精神と同じ様なことをやっていますね。やっぱり作者に会って話を聞くと、その人から生まれてきた作品だという実感が湧くから、それがサイトに載せているインタビューからも伝わってほしいと思っています。今を活躍する現代アーティストを応援して、新しい作品がどんどん生まれていくのを見ることが出来るって、すごく楽しいことだと思うんです。

しょこたん:確かに、アーティストの情熱がほとばしる大事な瞬間って人生の中ですごく限られてる気がして、そういう時に出来るだけ多くの人の目に触れてほしいですし、評価もされてほしいですよね。そのなかからとんでもないアーティストになる方も絶対にいるはずから。

倉本:しょこたんもずっと絵を描いていて、自身のアパレル・ブランド“mmts(マミタス)”につながっているというのも面白い話ですよね。

しょこたん:mmtsに猫のイラストを使うようになったのは、BEAMSさんとご一緒させてもらうようになってからで、たまたまBEAMSの社長の設楽(洋)さんが中野の出身で、私も中野ブロードウェイが好きで話が盛り上がったんです。いつかあそこでお店をやるのが夢だったので、まさかこういう形で自分の願いが叶うと思っていなかったです。ありがたいことにお客さんも私のファンの方だけではなく、外国から来たネコが好きな方とかも買いに来てくれたりしています。

倉本:それはつまり作品の魅力に人が惹きつけられて、買っていくっていう現象ですよね。

しょこたん:好きなネコたちが生きた証を残したい、というところから絵を描きたいと思うようになって、それが形になりましたね。やっぱり仕事モードではなく、楽しい気持ちで前のめりにやるのって全然違いますよね。アーティストのみなさんが作る作品は、そういう部分でも心を動かされる部分がありますから。

アーティストは“人からは変だ”と言われても
本当に自分が面白いと思うことを追求するのが大事ーー倉本

倉本:アーティストが活動をはじめる当初、誰に認められるかなんて分からないけど、とにかく作りたい衝動に駆られてはじめるものだと思うんです。だからこそそういう気持ちから生まれた作品にはエネルギーがあって、不思議とそれが伝わってくるんですよ。アーティストは“人からは変だ”と言われても、本当に自分が面白いと思うことを追求するのが大事で、こういう風にも生きていけるんだ、ということをこのサイトを通して、若い世代にも伝えていきたい。最近話題になったしょこたんの書籍を読んだときに、そういう風にいろんなことを乗り越えてきたと書かれていて、しょこたんもアーティストだなって思いました。

しょこたん:いじめについての書籍を出すにあたって、子どもたちに読んでほしいと思って書いたのですが、活字を読み慣れていない子供たちのことを考えたら、絵が多いほうがいいなと思って、30ページくらい漫画を描きました。絵で表現したいことがあったので、絵を描くのを続けていてよかったなと。

倉本:自分が好きなことを続けていったら、こうやって人の役に立つことになったというのはすごいことですよ。

しょこたん:やっぱり10代の子たちに”これやん”を見て欲しいですね。それで他の人が何かを言ってきても、気にしないで欲しい。好きなことを徹底的にやるということが、アーティストのみなさんのようにカッコイイことだと思うんですよね。

倉本:人と違うことがカッコイイと思える時代になって欲しいですね。無名な作家さんたちが面白い作品を売り出して、頑張ってやり続けていると思うと、自分もそれで良いと思える。そうすればアートがもっと一般の人にも近い存在になって、みんながもっとアートを購入するようになったら、そういう時代に一歩近づくと思いますね。

中川翔子

歌手・タレント・女優・声優・イラストレーターなど、多方面で活躍。東京オリンピック・パラリンピック競技大会のマスコット審査委員や、2025年開催万博誘致スペシャルサポーターなど、文化人としても活動。著書『「死ぬんじゃねーぞ!!」いじめられている君はゼッタイ悪くない』がベストセラーとなった。12月4日(水)に約5年ぶりとなるニューアルバム『RGB ~True Color~』 をリリース。12月23日(月)に5回目のディナーショー「Shoko Nakagawa presents X’mas ディナーショー 2019 ありがとうの笑顔~5th anniversary Ballad with Strings~」を開催。

https://www.shokotan.jp/

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