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ヒロ杉山と語る芸術談義 ~アートを買う価値観とは?~

倉本と親交のある人物をゲストに迎えてアートについて語る芸術談義。今回のゲストはつい先日、これやんに作品を出品していただいたヒロ杉山先生。若い頃からアート作品をコレクションしている先生に、アートを買うようになった経緯や、アートを買う人々が持つ感覚や価値観などについて、海外でも活躍する先生ならではの視点で語っていただきました。

倉本:ヒロさんがはじめて買ったアート作品は何でしたか?

杉山:僕がまだ湯村(輝彦)さんの元にいた頃で、そんなにお金がなかったんですけど、原宿にGALLERY 360°っていうギャラリーがあり、そこでポップ・アート界の巨匠ジム・ダインの版画が販売していて、当時の自分としては高い値段だったのですが、お金を貯めて購入しました。

倉本:やっぱり最初は欲しいという衝動でしたか?

杉山:そうですね。欲しいのと同時に、有名な作家の作品を買う行為にもドキドキしました。何年も前からずっと作品集で見ていた作家でしたし、版画にせよ本物の作品が家に来るというワクワク感もあって、そのためなら多少高い金額であっても他のことを節約して買いたいって思いましたね。

ヒロさんのように20代の頃から
アート作品を買える感覚は珍しいと思いますーー倉本

倉本:ちなみにヒロさんが最初に買った作品はどうやって飾りましたか?

杉山:日本の家って賃貸だと釘が打てないのが問題だと思っていて……自由に釘が打てたらもっと壁にたくさん作品を飾ることができますからね。だから壁に立てかけていました。

倉本:どこに喜びを求めるのかというところにもなりますが、本物のアート作品が家にあるという感覚は格別のものですよね。ヒロさんのように20代の頃からアート作品を買える感覚は珍しいと思います。

杉山:やっぱり、日本人って自分で価値を決めるのが苦手なのかなとは思いますね。ルイヴィトンのハンドバックのように多くの人に認められた価値のあるものにはお金を出せるけど、同じ金額の絵画となると難しかったりして……つまりその価値は自分で認めないといけないわけじゃないですか。

倉本:ブランド化されたようなアーティストの作品なら触手が伸びるのかもしれませんが、そういった人の作品は手の届く金額をはるかに超えていたりしますからね。僕の場合、作家自体のことが好きになっていくというか、作品を見てこの人がどういう人生を送ってこの作品が生まれたのか、そういうところに魅力があると思っています。

ヨーロッパは買う人たちにも層があって、
自分に見合った作品を自らの判断で買う印象がありますーー杉山

杉山:そうですよね、僕がパリで開催する「FIAC」というアートフェアに出展したときに老夫婦が僕の展示ブースにきて、いろんな質問をぶつけてくるんです。今の倉本さんの話のように、作品や作家の背景を知りたくて話をして、それを知ったうえで作品を買っていかれたのですが、そのやり方はすごく正しいなと思いました。やはり、ヨーロッパは作家を支援する考えが通底しているのが大きいですね。だからこそ、そのためのマーケットもしっかりしている。FIACで感じたことですが、高い作品から手頃な作品まで買う人たちにも層があって、それぞれが自分に見合った作品を自らの判断で買っていく印象がありました。

倉本:僕が「これやん」でやりたいことはまさにそういうことで、FIACで杉山さん出会った老夫婦のように、その人がどういう思いで作品を作ったのかが分かるインタビューと写真を載せることで、いろんなアートや作家さんに出会えるチャンスを共有したいなと思っています。

杉山:倉本さんがやっていることは素晴らしいことだと思います。作品が売れるようになればマーケットもできるし、作家が潤いますからね。若手の作家にとって絵が一枚売れたら、制作に充てられる時間が増えるのと同じであって。これやんのようなサイトで若いアーティストの作品がどんどん売れたら、日本のアートシーンの底上げにも繋がると思います。

やっぱり自分が“欲しい”って思う直感は正しいんです。
その人が有名だとかそういう情報はあとから付いてくるものですーー杉山

倉本:ヒロさんもアートを広めるためにいろんなことをやられていますよね。例えば「Neo Silk」というイベントだったり。

杉山:「Neo Silk」はシルクスクリーンの作品を集めて販売するイベントですが、シルクのいいところはエディションものなので、一点ものの作品よりかは手頃な値段だということですね。僕が最初に買ったのも版画でしたし、アートを買う入り口としては入りやすいなと。

倉本:版画であれ、一点モノであれ、アート作品を所有するというのは、楽しい趣味だと思うんですよ。買った作家さんがその後どう成長していくのかを見るのも楽しいですし、そういう意味でもアートって生き物を所有するような感じもありますね。

杉山:やっぱり自分が“欲しい”って思う直感は正しいんですよね。その人が有名だとかそういう情報はあとから付いてくるものであって、まずは見たときに“家に飾りたい”って思うことが一番大事ですね。そうじゃない気持ちで買うと、飽きてしまうこともありますから。

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