リサ・ロウ×倉本美津留~鬼束ちひろ、芸術家としての一面を語る~
歌詞を書くから読みそうって言われるけど、
活字がダメで、まず絵がありきーー鬼束
倉本:鬼束さんは今回登場していただくリサ・ロウ名義で、アーティストとしても活動もされていますが、こういう表現方法はいつ頃からはじめたのですか?
鬼束:昔からやっています。でも、ずっと芸術名でやりたくて、まだリサ・ロウという名前は決まっていなかったんだけど。
倉本:アーティスト名の由来は?
鬼束:すごく不思議な出来事があって、小学校2年生くらいの時に女の子と「外人だったらどんな名前がいい?」とか言ってて「リサ!」って言ってたんですよ、私。最近、リサ・ロウって名前をつけたんですが「たしかあの時“リサ”って言ってた!」って思い出して。だから、夢を叶えたんですよ。
倉本:絵を描くのは昔から好きだったの?
鬼束:好きでした。成績もよくて、学校の校庭を描いて金賞取ったりもしました。でも、それはやっつけで描いたもので、好きだったのは少女漫画を描くことでした。私、コマ割りめっちゃうまいですよ。ヌレバヤシトウジロウって名前で、いろんなの描いていました。
倉本:漫画が好きだったんですね。
鬼束:小説とかは読まないんです。歌詞を書くから読みそうって言われるけど、活字がダメで、まず絵がありきという。だから映画も好きです。
倉本:それが言葉化されて歌になっていくっていうこと?
鬼束:そう。それは無意識下の意識で、言葉っていうのは自然淘汰されますよね。 “これはあんまり好きな言葉じゃない”みたいに。
鬼束さんは音楽をやる時も絵を描く時も同軸というか
同じような感覚で発信しているーー倉本
倉本:それで残っていくものが、自分の言葉になるってことなんですね。だから音楽をやる時も絵を描く時も同軸というか、同じような感覚で発信しているという。
鬼束:演じているのかもしれないです、こういう私を。だから、歌手をやっている私と、リサ・ロウ・モードっていうのに入り込んでいってる私が入れ替わったりもしましす。逆を言えば「演じている」っていう。だから自分のことをエンターテイナーだと思います。だからたぶん女優もできると思うし、実際に話が来たことがあります。20歳の時にジャズ・シンガーのシングル・マザーとかいう役だった。“20歳でシングルママの心情やれるのか?”と思って、断りました。だけど、エンターテイナーとして笑わせたり、刺激を与えたりするのは好きです。自分も楽しいから。
倉本:表現者は刺激を与えないと存在する意味がないからね。
鬼束:そう。行って、見て、見る相手がいてなんぼだって思ってる。あと、シビアな話、仕事だからお金も絡んでくるし。 歌も聞かせるし、ものも見せる。そういうことはすごく意識しています。
倉本:リサ・ロウの作品を見た人に感じてほしいことはありますか?
鬼束:特にはないです。それは詞も曲も同じで、自分が作ったものは成人した子供みたいになっていくんですよね。それこそ有名な曲があるとモノマネされたり、カバーされたりするけど、どんどんやってくださいって感じ。すごくオーバーにモノマネしたりする人もいて“ありがとう!”って思っちゃう。
自分の中にリサ・ロウを入れたり
鬼束ちひろを入れたりすることが楽にできるーー鬼束
倉本:鬼束さんは“生み出したい”という衝動を持った人なんですね。で、生み出したら次に行く! っていう感じで。
鬼束:病的ってほどではないのですが、私は自分がないんですよ。例えば“ちいちゃん”って呼ばれても振り向かない時があったり、自分が写っている鏡を見て“え、私って物体がある”って思う時があります。だから、自分の中にリサ・ロウを入れたり、鬼束ちひろを入れたりすることが楽にできるんですよね。
倉本:自分が器になっているみたいな?
鬼束:そうそう。器になって心だけがある感じ。それがずーっと続いている。だから既成概念もないんですよね。
倉本: 存在がアートみたいな感じですね。
鬼束:ほんと? それよりも不精な物好きって感じですよ。決しておしゃれではないかな。
倉本:アートを創作する表現者としての活動は、音楽を作ることと似ていると思いますか?
鬼束:似ていますね。音楽も似てるし、リサ・ロウも似ていて、生活している感じも似ているから、全部一緒かな(笑)。だから猛獣とか珍獣って言われます。だって、私が一緒にやっているピアニストの坂本(昌之)さんは、私のことを“暴れん坊将軍どころじゃないよね”って言う。でもそれって“ちいちゃんはちいちゃん”って、思ってくれているってことだからそう言ってくれる人は好きです。たぶん、私のことを何も知らない人は怖がると思うし。
倉本:たぶん、ひとりで描いてるところをそっと覗いたら、ひくのかもしれないよね(笑)。
鬼束:でも、それを俯瞰して見てみたらすごく面白いだろうなと思って、楽しんでいます。やっぱり、ただ街を歩いていても、刺激なんてそんなに入ってこないじゃないですか? でも、私は刺激を作り出せる。ダウンタウンの松本さんが“畳一枚の中で面白いことを何も考えられなかったらダメ”みたいなこと言ってて、その気持ちがすごいわかるんですよ。だから私、牢獄とか閉じ込められたら、めっちゃ面白いこと考えられると思っていて。ただ、ひとりで空回りしてジタバタしてるかもだけど!
※この取材当日に現場で一緒になった竹中直人さんと意気投合し、竹中さんのラジオ「竹中直人~月夜の蟹~」(TBSラジオ)に鬼束さんの出演が決定しました。放送日は1月12日(日)、19日(日)、26日(日)、2月2日(日)の4週連続で、いずれも19時半~20時の放送です。
https://www.tbsradio.jp/tukiyo/
※リサ・ロウの作品は後日、これやんに出品します。こちらもお楽しみにお待ちください!
2000年2月発売CDシングル「シャイン」でデビュー。同年発売の1stアルバム『インソムニア』がミリオンセラーを記録し、「日本ゴールドディスク大賞・ロックアルバムオブジイヤー」を受賞。2001年発売のシングル「眩暈」が第43回日本レコード大賞作詞賞を受賞。以来、現在までに22枚のシングルと7枚のアルバムを発表。2020年2月20日にベストアルバム『REQUIEM AND SILENCE』を発売予定。アーティスト活動としては、2011年5月にイラストやコラージュなどを集めた初の個展「BUNNY AND THE PYTHON」をSUNDLAND CAFÉにて開催。2018年2月にはリサ・ロウ名義でコラージュ・アート展「Lisa-Low-code」をThink food LOTUS CAFÉにて開催。ホームページでは期間限定で作品販売も行なっている。