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竹中直人と語る芸術談義 ~自分にとって面白いものを探す~

個性的なキャラクターで役者、映画監督として多方面で活躍する竹中直人さん。倉本も多大な影響を受けたという、竹中さんのコメディアンとしての独自の表現はいかにして生まれたのか? “竹中さんの笑いはアートにも通じる”と語る倉本が、竹中さんが持つ映画、そしてアートに持つ感覚について迫ります。

竹中さんの芸には既成概念を壊そうとする
シュールレアリスムのような感覚があったーー倉本

倉本:僕が思春期の頃、竹中さんからはつげ義春さんと同じくらいの影響を受けていまして、竹中さんは2016年にあった「ダリ展」の音声ガイドをやられていたじゃないですか? それで“めちゃめちゃマッチングしている!”と思いました。

竹中:ダリと比べられたら、僕なんて地の底ですよ(笑)。

倉本:子どもの頃に竹中さんの芸を見て、既成概念を壊そうとするシュールレアリスムのような感覚があって好きでした。ですから僕は、竹中さんをずっとアートの人だと思っていました。多摩美術大学に入学したきっかけは何でしたか?

竹中:小学生の時に手塚治虫さんの漫画に出会って、その頃は漫画家になりたかったんです。その後、多摩美のグラフィックデザイン科に入学して、映像演出研究会という8ミリ映画を作るクラブにも入りました。在学中に映画の世界に憧れ、多摩美を卒業してから劇団に入りました。劇団に入ってもなかなかお仕事はなく自分で売り込み活動を始めました。そのなかである方から横山やすしさんが司会をされていた『ザ・テレビ演芸』に出てみないか、と声をかけていただきました。

倉本:僕は中島らもさんとやられていたバラエティ番組『どんぶり5656』が好きでした。そこで竹中さんを見た時に、つげ(義春)さんと近い感じがして。とにかくわけが分からないというか、予測のつかないことが目で見られるという。それがシュールレアリスムというアートの範疇に全部あるのだと思いました。お笑いとアートってお互いに離れているように見えて、本当は近しいものなんですよ。竹中さんがそれを意識していらっしゃるかは分かりませんが、僕は勝手にそう思っていました。

僕が面白いと思う映画にお客さんが
入ってないって聞くとホッとしますーー竹中

竹中:誰もが評価している物を見てもしょうがないという思いがあったりします。自分にとって面白いと思うものを探したいんですよね。だから、僕が面白いと思う映画にお客さんが入ってないって聞くとちょっとホッとするんです。だから良い映画でも、あまり人に伝えたくない。本当に大切な友だちにだけにそっと教えたいです。人間が小さいですからね(笑)。

倉本:アートに関しても、そういった感覚がありますか?

竹中:アートと映画の区分けは、僕のなかでは無いです。大学時代、ジョージア・オキーフが好きで、彼女の画集のなかにニューヨークのネオンを描いている作品があったのですが、その絵のなかに描かれているネオンの文字が何と書いてあるのか読めなかった。それから20年以上が経ち、日本で行なわれた「ジョージア・オキーフ展」ではじめて原画を見て、ネオンサインに描かれていた文字が初めて分かりました。それはオキーフが愛した夫でもあり、カメラマンのアルフレッド・スティーグリッツの名前だった。それを知ったときは感動しましたね。あとは藤田嗣治も大好きで、NHKが藤田を描いたドラマ「お前なしでは生きていけない ~猫を愛した芸術家の物語」で、僕は藤田の役を演じさせて頂ました。それがきっかけでJALの機内誌の企画で実際にノルマンディー地方のヴィリエ・ル・バークルという藤田が晩年住んでいた村に行きました。そこで、藤田が住んだ家で撮影もしました。するとそこの館主さんが僕を見て“FUJITA!”と叫び!  FUJITAが自分で作った服を持って来てくださって、それが僕のサイズにピッタリでびっくりしたんです(笑)。

倉本:竹中さんにとってのオキーフのように、ずっと好きな作品は後々“そんなことがあったんだ”という瞬間が訪れることがありますよね。僕もつげさんが久しぶりに「石を売る」を描き始めて、自分の好きな竹中さんがそれを映画にするって聞いて“何だって!”と思いました(笑)。

竹中:懐かしいですね。先日、久しぶりに僕が監督したつげさんの「無能の人」のフィルム上映を見たら、35ミリのフィルムにいい具合に傷が入っていて、フィルムも年を取るんだなってロマンチックな気持ちになりました。今は携帯電話でも映画が見られる時代ですが、フィルムの持つ質感と時代を知っておいて僕は良かったなと思います。自分で言うのも何ですが、30年近く経って自分が監督した作品を見た時に“いい映画を撮ったなぁ…”ってうれしくなって、思わず飲みに行きました(笑)。

絵描きも映画監督も僕たちの仕事は
見られて初めて評価されるものーー竹中

倉本:最近行かれたアートの展示で印象に残っているものは何ですか?

竹中:2019年に清水寺で開催された原田マハさん主催の「CONTACT」が面白かったですね。展示物に対して一切の説明を入れずに、モネの絵なんかがさり気なく清水寺に飾ってあったりして。ほかにも小津安二郎さんの直筆の文字や絵コンテ、川端康成さんの直筆原稿などもありました。それも一切照明も無しで設置されていたり、素晴らしかったです。

倉本:あえて説明はしないで、自分で感じるというコンセプトなのですね。

竹中:そうです。ただ、見て感じるだけ。すごくステキな企画でした。僕もアートという、硬いこだわりがない内容でトークイベントにも参加しました。ジョージア・オオキーフがアルフレッド・スティーグリッツに宛てた素敵なラブレターの話もしたり、小津映画のお話をしたりして、楽しかったです。

倉本:竹中さんは絵を購入することもありますか?

竹中:ミズテツオさんの絵はとても好きで購入します。でも、絵を買うというのは洋服を買うのとは違い、特別な感じで緊張しますね(笑)。自分の家のどこに飾るのか……それが意外に大変な作業だったりします。広い家じゃないのに……。

対談のなかで描いてもらった竹中さんの作品をこれやんにて販売します。
作品の詳細、作家としてのインタビュー記事はこちらをご覧ください。

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