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芳一

曽我篤Atsushi Soga

作品概要

制作年
2021年
素材
墨、紙
サイズ
320mm(幅)×410mm(高さ)×12mm(奥行き)
特筆事項
ファブリアーノの水彩紙に毛筆で書いています。
販売価格¥165,000(税込み)

倉本美津留のこれやんコメント

アルファベットなどの文字の独特のタッチで描くカリグラフィーを用いた作品を生み出すアーティスト、曽我篤さん。こちらの作品は本作は第49回國際書道連盟展で秀作賞を受賞した作品。“耳なし芳一”をテーマにしていて、般若心経の文字を薄くすることで芳一をうっすらと浮き立たせています。まるで目の錯覚のようにも感じるこの立体的な手法は、これまでの自画像シリーズとも異なるアプローチと言えるでしょう。
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STORY

倉本:曽我さんの表現の根本にあるカリグラフィーとは、アルファベットを独特のタッチで描く技術ですが、そもそもカリグラフィーに興味を持った経緯はどういったものでしたか?

曽我:もともとはIT関係のシステムエンジニアとして働いていて、四六時中コンピューターの前に座っていました。そんな仕事の息抜きに、自分が読んだ本で感銘を受けた文章を万年筆で書き写していました。あるとき、友だちと一緒に静岡の「ink」という大きな文房具店に行ったときに、安く売っていたカリグラフィーペンを購入して文字を書いてみたら、いつもよりも文字が綺麗に、かつ緻密に書けることを知って新しい世界を感じました。そこからカリグラフィーの世界に魅了されていきました。

倉本:その後はどのようにカリグラフィーを学んでいったのですか?

曽我:最初は独学で調べていましたが、それでは足りないと思い、カリグラフィー教室に通うようにもなりました。カリグラフィーはキリスト教の修道士たちが羊皮紙を作ったり、ガチョウの羽からペンを作り、聖書の経典などを模写するという歴史がありますが、そのなかでも時代による書体の移り変わりに興味を持ちました。例えば平和な時代は丸い書体になったり、戦争の時代になると線が細くなったり、暗号に近い国独自の書体が生まれたり。文字は時代を表現するものなんです。

倉本:そういったカリグラフィーの表現を用いつつも、それを自身の作品へどうやって結びつけていきましたか?

曽我:絵や字が上手い人はたくさんいますから、そういうなかで勝負するなら字と絵を同時に表現できたら良いと思い、文字で絵を表現するスタイルを模索しました。そんなときにコロナ禍になって家で過ごす時間が増えたこともあり、じっくりと自分の作風を研究でき、ようやくカタチになってきたという感じです。

倉本:人物と文字の関係性はどういったものですか?

曽我:基本的には描いている人物のエッセイや小説、文章でその人を表現しています。具体的には、まずはペンの濃淡で人物画をスケッチし、書いた人物画ののなかにどの文章を使うかをセレクトして、文字を乗せながら、文字の大きさや線の太さで立体的に表現していきます。イメージとしては人体のCTスキャンのように輪切りにして、立体にしていくようなイメージです。

倉本:話を聞いていると、前職のシステムエンジニアもコンピューターの言語(文字)で、ある意味で今の表現とも共通していると感じました。

曽我:自分では考えたこともなかったですが、確かにそうかもしれないです。文字は自然界には無いものですが、例えば読めない言語でも美しさを感じられるように、文字の美しさの法則は世界共通の黄金比のようなものがあるんです。しかもそれは、自然に寄り添うほどに美しく感じるもので、そういったことを作品を通じて表現していきたいと思っています。