ヤク
作品概要
- 制作年
- 2021年
- 素材
- 紙、アクリル
- サイズ
- 303mm(幅)×242mm(高さ)
- 特筆事項
- 額込みの作品です。
これやんの作品コメント
STORY
これやん:魚谷さんが切り絵をはじめた経緯を教えてください。
魚谷:切り絵は最初、中学生の頃にはじめました。まわりの子は絵が上手かったので、自分だけにできて、みんなに喜んでもらえる方法を考えたときに、切ったら面白いと思ったのがきっかけでした。美大ではデザインをやろうと思っていましたが、3年生の頃にもう一度切り絵を作ってみたんです。その時に喜んでもらえたのが大きくて、卒業制作も切り絵でした。
これやん:真空管のなかに切り絵を収めた作品は、とてもインパクトがありますね。立体のなかで切り絵を見ることで違和感と驚きを感じます。
魚谷:見た人に美しいという以上の体験をしてもらいたくて、こういう立体作品を作りました。明治のチョコレートの包み紙一枚を切って作っていますが、もともと捨てられるものから、人の心を動かすものが作ることができるって、なんて素敵なんだろうという思いを込めて作りました。
これやん:真空管を使うという発想はどう生まれたのですか?
魚谷:真空管自体も消えつつある存在で、失われていくものが違う何かになるところに、チョコレートの包み紙と同じものを感じたので、一緒に組み合わせてみようと思いました。真空管は見た目もカッコいいですし、管球が焦げ付いてるのもまた味があっていいんです。真空管はバルブの温度が時には200度くらいまで上がりますが、熱を放つというのも魅力だと思っています。
これやん:その中に入っている切り絵は、花の造形になっていますね。
魚谷:この作品は捨てられるものが何にでも変わることができるという“運命からの脱却”がテーマですが、ちょっとネガティブな自分を投影しています。ダメだなぁって腐っていたら何にもなれないし、そういうときこそ明るいところを見ていこうって思ったことがあり、ひまわりという花が持つエネルギーや可愛らしさに憧れを感じて表現しました。でも、よく見ると花の中が細かい星柄になっていて、太陽の方角を向く花ではありますが、そのなかは太陽になってはいません。なぜなら私はネガティブなときに太陽を見ると疲れてしまうので、そういうときに見るのが星なんじゃないかなって。だから“星を向く花”というタイトルにしています。
これやん:もともとは視覚伝達デザインを学び、それから切り絵作家となったわけですが、デザインとアートにはどんな違いを感じていますか?
魚谷:ポスターとかデザインは一発で心を掴むものですが、アートはその人に寄り添って長く付き合うものなので、簡単に伝わるだけではダメな気がしています。もっと人を引き込むという点ではデザインともちょっと違うというか。そこにアートの面白さと難しさを感じています。最近では紙の種類を試したり、ふわふわした毛並みだったり生き生きとした流れのような質感を線で表現したいと思っています。切り絵の線は、刃で2回切り込むことで作りますが、毛のような繊細な線から線とは思えない面まで表現できます。なので、線の太さを使い分けてグラデーションのように見せたりして、どうやったら切り絵として見やすい作品になるのかを考えています。そういう客観的な視点で捉えると切り絵ってあらためて難しいなって思ったり。そんな風に悩みながら楽しみながら作っていますね。