ご飯付きカレー皿
作品概要
- 制作年
- 2019年
- 使用素材
- 磁土
- サイズ
- 230mm(φ)×80mm(高さ)
- 特筆事項
- 桐箱付き
倉本美津留のこれやんコメント
STORY
倉本:福本さんが作る“フクモ陶器”の作品は、笑いを含んだアート作品であることが魅力だと思っています。そういった作風へと至った道筋はどのようなものでしたか?
福本:そもそもはご飯付きカレー皿を大学の課題で作ったのが最初でした。大学が多摩美術大学でしたが、オーソドックスな器を作ることはまったく教えてくれなくて、彫刻的な謎のオブジェを作っていました(笑)。今の自分とはあまりにもかけ離れていたのですが、間島領一先生に“素材はなんでもよいから人を笑わせるものを作りなさい”という課題制作があったんです。先生に“人を怒らせたり喜ばせたりするのは簡単だが、笑わせるのが一番難しいからそれをやりなさい”と言われ、考えた末にできたのがカレー皿でした。それで焼き物でこういうことができることにも気がつけました。もうひとつ間島先生が“人間が作品に絡んだほうが面白さも生まれる”おっしゃっていて、それもふまえても器という表現は向いているなと。
倉本:他の人の反応はどうでしたか?
福本:やっぱりみんな笑ってくれましたね。頭をなぐられたような気持ちになるとか、ショックだって言われたこともよくあります。
倉本:確かに福本さんの作品にはショックを感じます。作品に書いてある文字も笑わせてくれますよね。
福本:茶碗って“銘”といって、名前がついていたりしますが、それ自体がおもしろいですよね。人間がなんで茶碗に名前付けているんだって(笑)。それで私も名前つけてやろうと思って、いい熟語は普段からストックしています。
倉本:笑いというユーモアの部分では何かから影響を受けたりはしましたか?
福本:小学校のときに年の離れた姉が吉田戦車の漫画を持っていて、そのときはまだ小学生だったのでシュールすぎてよく分からなかったんですけど、姉が面白いっていうので読んでいたら、だんだんと面白さがわかるようになってきて、その早すぎた吉田戦車体験が今に生きているんじゃないかと、思います。
倉本:確かに、笑いの構造で言うと福本さんの作品は“ボケ”の状態ですよね、だから鑑賞者が突っ込まざるを得ないというか。吉田戦車の漫画も同じでつっこみがあまりなくてシュールなまま話が進んでいくという、その感覚が作品にもありますよね。福本さんが作っている陶芸作品は、どういうところから発想を得ているのですか?
福本:私はいんちきな骨董品や偽の土産物を作ったりしていますが、古い骨董品や中国の陶器が好きで、見ていると何だかバカらしいものがいっぱいあるんです。そういうのみると“ややっ”と思い、私も作ってみたくなります。焼き物の何が面白いのかというと、それを作った人と使っている人……つまり人間が面白いんですよね。でも、陶器は保つけど人は死んでしまうので、陶器だけがその痕跡として残る、それがおもしろいなと思います。