あしもとから鳥が立つ1
作品概要
- 制作年
- 2015年
- 使用素材
- ミクストメディア
- サイズ
- 500mm(幅)×730mm(高さ)
STORY
倉本:cicciさんのイラストは絵画のようで版画であるという独特のタッチですよね。まず、なぜ版画家だったのですか?
cicci:小さい頃からずっと絵を描くことが大好きだったんです。中学生の頃に母が「クリエイション」という世界のグラフィックデザインが載ったアートブックをたくさん買ってきてくれて、田中一光さん横尾忠則さんをはじめ、世界中の芸術家の方々が1冊に4人くらい載っていたのですが、それを読んで衝撃を受けました。同じ頃にポーランドのポスター芸術を見て、ますます絵画表現の幅の広さを感じたんです。それで私は絵をやりたかったから、ただ絵を学ぶだけじゃなくて、表現に幅を持たせたくて、技術も学べるようにと大学では版画を選びました。
倉本:今の画風はどんな風にして生まれたんですか?
cicci:大学3年の頃に課題で、自分で物語を作って版画を刷っていました。作品を作り続けるのには物語があったほうが作りやすいからなんですが、工房も一緒だし、仲間同士がだんだんと絵風が似てきてしまって……私は、こんな風じゃなくて、もっといろんな人が見たときに一目で惹きつけられるものってなんやろうと?と思い悩んで……ダイレクトに人の顔の絵を描こうと思いました。というのも、その頃、ちょっと落ち込むようなことがあって……自分を見つめ直すためにも、まっすぐ前を見つめる女性の画を描き始めました。その画が商業ビルの公募展で受賞し、一年間を通して駅ビルの広告になって、それが自分にとってもビッグステップになり、次々とポスターなどに採用されました。ただ、この頃は版画ではなくてペインティングでした。
倉本:今回持ってきてもらった作品は版画ですよね?
cicci:そうです。版画といっても今は子育てをしているのでコピー機を使ってやっています。
倉本:コピー機で?
cicci:ええ、以前は版画の工房に通っていましたが、子育てをしながらできる状況ではなくて、身近なものでできる方法を考えました。版画はクレヨンでアルミ板に描きますが、今の私はアニメ用の透明フィルムにクレヨンで描いて、削って……と代用し、それをフィルムをつけたまま、もしく取った状態、フィルムだけなどのパターンでコピー機で印刷して、それをパネルに上でコラージュしていくというやり方です。これだと素材を貼り込むまでは試行錯誤できるので子育てしながらの時間のやりくりにはあっているんです。
倉本:子育てをしながら生み出したのが、今の独特のコラージュの技法になっているんですね。どこまでがコラージュで、どこまでがドローイングか分からないというか、自分のなかから出てきたものを組み合わせているような印象ですね。
cicci:版画はあとから削るくらいのことは出来ますが、そこまでの大きいチェンジが出来ないのですが、このやり方だといつまでも検討できるというか……貼り込み終えるまではいくらでも変えられるし、そのぶん悩む楽しみがあるんです。