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小さな方舟/Little Noah 3-1

蔦本大樹Daiki Tsutamoto

作品概要

制作年
2023年
素材
青銅、金メッキ
サイズ
60mm(幅)×50mm(高さ)×20mm(奥行き)
特筆事項
ガラス台座付き

これやんの作品コメント

SICF21の受賞経験を持つ蔦本大樹さん。ワイヤーを用いた造形から鋳造した金工作品へと変化した最新作品をご紹介します。この作品も“古代魚”をイメージした作品です。中国の青銅器などに用いられた怪獣、饕餮紋(とうてつもん)などからも着想を得ていて、いろんな古代の生き物がミックスされた独特の造形に加えて、青銅に錆加工を施すことで昔の遺跡のような雰囲気を醸し出しています。丸い造形は「金のなる木」をイメージしています。
SOLD OUT

STORY

これやん:もともとはワイヤーを用いた作品制作を行っていましたが、そのきっかけは何でしたか?

蔦本:ワイヤーに触れたのは中学時代の軟式テニス部の頃でした。中途半端な上手さだったこともあり、試合では応援に回されることが多く、よく行っていた会場のフェンスがボロボロで地面にワイヤーの欠片が落ちていました。僕は試合を見るのが好きではなかったので、暇つぶしにワイヤーを拾って、小さい棒人形やドラゴンを作っていました。それからビニールの皮膜がついた園芸用カラーワイヤーを見て、これならフェンスの端くれを拾わなくても作れると思いニッパーとペンチを買い、好きだったサメやカジキといった魚を作りはじめました。これがあればフィギュアを買わなくても、自分で何でも作れるからいいなと思っていました。

これやん:早くから自分にしかできない表現方法を体得したんですね。

蔦本:はい、美術系の大学ではワイヤーでの制作技法は自分で追求しながら、デザインやフィギュアや彫刻・造形、色の勉強をしました。それと美しい作品を見ることで感覚が洗練されたのは大きかったです。それまでは自分がハマったものをそのままワイヤーで再現していましたが、大学に入ってからは自分が美しいと思うものや、ワイヤーにしかできない気持ち良い造形を追求するようになりました。

これやん:現在ではワイヤーから素材が変化しましたが、その経緯について教えてください。

蔦本:美術系の大学で助手を務めるようになったのがきっかけでした。金工の工房を作業スペースとして使えることになり、そこで自分も溶接や彫金の技術を学びました。最初はワイヤーを用いた作品に新しく学んだ技法を織り交ぜていったのですが、金工の技術を磨くことで、今ならワイヤーを使わずとも自分が理想としていた、造形的な説得力を持った彫刻作品が作れるなと思い、今の造形に至りました。それと、ワイヤーの作品は制作にかなり時間を要することもあって、今の自分の環境的にもなかなか制作時間が作れずにいたのも、作風の変化に影響しています。

これやん:素材が変わったことで、制作の仕方にも変化がありましたか?

蔦本:もともとフィギュアを作っていくという感覚で作っていて、ワイヤーの場合はフレームを作ってからワイヤーを編んで空間を埋めていくのですが、現在の金工でも全体のカタチを構成していくという感覚は変わらないですね。

これやん:現在の作品も、以前のように経年変化したかのような味わいがありますね。

蔦本:古代の遺物のような存在感を持った作品を作りたいと思っていて、それもあってワイヤーの頃から金属という素材を選んでいます。僕の作品制作のテーマが時間の痕跡を感じられるものなので、今の鋳造を用いたスタイルになってからは、模った後に劣化させる技法を研究しながら制作しています。作品を見たときに博物館に行って遺跡を見たときのような感覚になってもらえたらいいなと思っています。