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Bloody Cage

蔦本大樹Daiki Tsutamoto

作品概要

制作年
2020年
使用素材
銅線、真鍮線、電着塗装、B5キャンバス、合成皮革
サイズ
190mm(幅)×70mm(高さ)×265mm(奥行き)
特筆事項
キャンバスと作品本体は取り外し可能です。

倉本美津留のこれやんコメント

SICF20の受賞経験を持ち、ワイヤーを用いて圧倒的な造形を生み出す蔦本大樹さんがこれやん初登場です。昆虫をモチーフにしたシリーズの作品では道具や飾りと生命力を表現していますが、こちらは蔦本さんが一番カッコイイと思う角を持った想像上のクワガタを表現した作品です。「Bloddy Cage」は籠や檻をイメージしていて、緻密でありながらもワイヤーの線の表現、金属の色彩のグラデーションがとてつもない力強さを生み出しています。
SOLD OUT

STORY

倉本:ワイヤーでの表現に至ったきっかけは何でしたか?

蔦本:ワイヤーに触れたのは中学時代の軟式テニス部の頃でした。中途半端な上手さだったこともあり、試合では応援に回されることが多く、よく行っていた会場のフェンスがボロボロで地面にワイヤーの欠片が落ちていました。僕は試合を見るのが好きではなかったので、暇つぶしにワイヤーを拾って、小さい棒人形やドラゴンを作っていました。それからビニールの皮膜がついた園芸用カラーワイヤーを見て、これならフェンスの端くれを拾わなくても作れると思いニッパーとペンチを買い、好きだったサメやカジキといった魚を作りはじめました。これがあればフィギュアを買わなくても、自分で何でも作れるからいいなと思っていました。

倉本:早くから自分にしかできない表現方法を体得したんですね。

蔦本:はい、美術系の大学ではワイヤーでの制作技法は自分で追求しながら、デザインやフィギュアや彫刻・造形、色の勉強をしました。それと美しい作品を見ることで感覚が洗練されたのは大きかったです。それまでは自分がハマったものをそのままワイヤーで再現していましたが、大学に入ってからは自分が美しいと思うものや、ワイヤーにしかできない気持ち良い造形を追求するようになりました。

倉本:この複雑な造形はどうやって作っているのですか?

蔦本:言葉で説明するのは難しいのですが……簡単に言えば張り子細工に近いです。自分が作りたい形をまず骨組みで作り、あとで立体的に面を埋めていくという感じでやっています。張り子で言うところの張った紙の面の形状をワイヤーで立体的に編むと、微妙な膨らみも表現できます。パーツごとに“これくらいの長さだな”と計算して編んで、それらを組んでいく感じです。“こう編むとこんな形状ができるかな?”と、そのつど、アタマで想像しながらやっています。そうは言っても、最終的な仕上がりが予想できないので、陶芸の釉薬に近い感覚があります。だからこの辺で編み方を変えたら、こんな模様が出るかなと想定しながらワイヤーを編み、やってみたら“思ったよりも面白い感じが出た”というような感じです。

倉本:張り子だと竹の骨組みと紙ですが、蔦本さんの場合、紙の部分がワイヤーになるんですね。そもそも、なぜワイヤーに興味を持ったのでしょう?

蔦本:これは他の作家さんも同じかもしれませんが、自分が何か作りたいと思ったときに一番近くにあった素材で作り出すと思うんです。僕の場合、それがボロボロのフェンスでした(笑)。僕にとってワイヤーの魅力は、線が重なれば重なるほど、相手に強い印象を与えるところです。線でも太い線から細い線からまであり、だんだんと細い線になることでギュっと密度が出てきて……僕のなかではそれを“生命力”と呼ぶのですが、そこを追求しています。例えば硫化させて黒くした銅を磨くことで、線の密度を浮き上がらせたりもします。

倉本:密度が高まる=生命力なんですね。

蔦本:僕にとっての彫刻作品って、見たときにグッとくるかどうかで、つまりは初見の印象で決まると思っています。それには考え抜かれたコンセプトよりも、造形が細かかったり、密度があって目を惹きつけることが大前提だなと。例えば超絶技巧の工芸作品のように、見ただけで凄さが伝わるものが好きなので、僕が作品を作るときはまず美しく、見たときにスゴイと感じるものであることが大事。コンセプトはそのあとで付け加えていきます。