Flatball 2018 No.03
作品概要
- 制作年
- 2018年
- 使用素材
- アクリル樹脂、アクリル絵具
- サイズ
- 170mm(Φ)
- 特筆事項
- 展示用アクリルベースが付属します
これやんの作品コメント
STORY
倉本:鮫島さんは球体に風景を描くという独創的な表現をしていますが、その手法にたどり着いたのはどんな経緯でしたか?
鮫島:この手法に至った一番の理由は、自分がいいなと感じた空間を全部絵にしたい思いがあり、キャンバスだとどうしても風景を切り取らなくてはならないからでした。それで、どうすればいいかを考えたときに、一度小屋を作り、内側全面に風景を描いてみました。ただ、これだとすごく大変だし、空間も狭かったのでそんなに良くは見えませんでした。それであるとき地球儀を見て“これならもっと簡単に全部の空間を描ける”と思ったのがスタートでした。
倉本:それを完成させるまでやり遂げたんですね。
鮫島:ひらめきはあったものの、そこからが大変でした。今でこそパノラマ写真や360°カメラが登場してこういう見え方が実現しましたが、どうしても画角が歪んでしまいますし、それが自分の中ではあんまり格好良くないと思っていました。その点、手描きの良さは部分的に見たら破綻がないように描けるので、そのへんのデフォルメの仕方というか、建物を大きくわかりやすく描いたりとか、そういった細かい調整に四苦八苦しながらやっていきました。
倉本:この作品は360°カメラのような歪みがなくて、直線のものがちゃんとまっすぐになっているからすごいですよね。自然に見えるかどうかというのは、ご自身の感覚なんですよね?
鮫島:そうですね。風景のもとになる写真はパノラマではなくて、一箇所ずつ正面で撮っていき、各パーツを見ながらそんなに歪みがないようにしていく……という作業の連続で、線を引いてフリーハンドで描いています。
倉本:本当に不思議というか、すごいものを発明しましたね。
鮫島:アイデアとしては“そこまですごいかな?”と自分では思っていましたが、とにかく制作が大変なので、他にやっている方はいないようですね(笑)。窓ひとつ描くのにもすべての消失点にパースを合わせて形をとっていくので、とにかく時間かかるんです。絵画は普通主役と脇役があるものですが、これは360度どこも正面なので、描こうと思ったらいつまでも描けてしまって、終わりがないです。だからいつも締め切りに追われて“この辺で終わっとかないと間に合わない”って感じですね(笑)。
倉本:そんな手間のかかるものであるのにもかかわらず、描いている風景は何気ない住宅地ですよね?
鮫島:はい、題材の風景はもっぱら家の近所ばかりです。それも理由があって、ランドマーク的なものがあると場所が限定されますが、“自分の家の近所かな”とか“どこかで見たことがあるな”と思ってもらえる風景のほうが入り込みやすいなと思っているからなんです。この作品を見て、自分も歩いたことある風景かもって感じになってもらいたいなと。そういう意味ではどんな場所でも絵になりうるし、視点を変えると別の見え方がしてくる……そこに面白みがあるんじゃないかなと思っています。