ブラックローズ
作品概要
- 制作年
- 2020年
- 素材
- ガラス、グリザイユ、銀箔、メープル
- サイズ
- 115mm(幅)×160mm(高さ)×40mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:ステンドグラスの現代美術家は日本だと珍しいと思います。なぜこの技法に辿りついたのですが?
八田:両親がステンドグラス作家であることもあり、身近にあったのが大きいですね。でも、僕は絵が好きだったので、大学では工芸ではなく日本画を専攻しました。いざ日本画を学んでみると、岩絵の具を扱うことをはじめ、なかなかに大変だなと思っていて……大学を卒業したときに、親の制作を手伝ってほしいということもあり、“フランスでステンドグラスを学んでみる?”と言われたんです。その時、僕はステンドをやるよりも、単純に海外に行きかったので、これはチャンスだと思って行きました。語学学校に通いながら、昼からはフランスで活動されている日本人の方の工房にお世話になっていたのですが、やってみたらステンドグラスの制作が楽しくなって、本格的にやりはじめました。
倉本:ご両親ともにステンドグラス作家とは、完全にDNAを受け継いでいるんですね。フランスでステンドグラスで学んだことで得た、大きなものは何でしたか?
八田:まず、フランスは絵付けのステンドグラスが有名で、日本によくあるアメリカのティファニー式とは違い、ケイム組み(鉛線)という、縁を回しながら組んでいくやり方を学びました。ヨーロッパの伝統的なステンドグラスは後者の技法がメインで、組む際に狂いが許されないので職人的な要素が強いです。フランスはどこにいってもステンドグラスの文化財があり、博物館に行くと昔のピースが手に取るような距離で見られて、筆遣いなども分かるんです。細かく作品を見るとわりと適当だけど、少し距離を離れたところで見ると、しっかりとキマっているんですよね。それを見て、何でも綺麗にすればいいわけではないということを学びました。
倉本:確かにステンドグラスは一定の距離感で見てこそ、綺麗だと感じますね。
八田:それって日本画にも通じるものがあると思うんです。例えば長谷川等伯の「松林図屏風」も近くで見ると荒いけど、遠くで見るとハマるっていう。僕はステンドグラスだけでなくて画も描きますが、画で一番大事なのは線だと思っていて、それも日本画で学んだ大事なことでした。それはステンドグラスでも同じことなんですよね。
倉本:なるほど、日本画とヨーロッパの伝統的なステンドグラスの技法が混ざることで、こんなにも個性的な作品が生まれたのですね。
八田:日本画からは空間の使い方、引き算の表現などを学びましたし、それに加えてアメリカのトラディショナル・タトゥーの絵柄や自分にとって身近な動物がモチーフになっていたりもします。僕はステンドグラスだけでなく画も描きますし、ひとつの技法にこだわらず、自分のやりたいことを正直に表現していきたいと思っています。