コウモリ大脱走
作品概要
- 制作年
- 2021年
- 素材
- MDF材、アクリルガッシュ、ラッカー、額
- サイズ
- 410mm(幅)×525mm(高さ)×30mm(奥行き)/額装込み
400mm(幅)×220mm(高さ)×7mm(厚み)/レリーフのみ
これやんの作品コメント
STORY
倉本:牧野さんが作品のモチーフに動物を選んだきっかけは何でしたか?
牧野:中学校の生物の授業で痕跡器官や相同器官を勉強したときに、すごく面白いなと思ったんです。例えば“相同器官であるコウモリの翼とヒトの手を比べてみよう”とか、そういうのが面白いなと。その経験もあって、物珍しい動物を見たときに“手足はどこにあたるのか?”と考えるようになりました。それで動物だったり人物を描くようになって、それをもとに立体を作りたいと思いました。
倉本:では、彫刻を学んだのですか?
牧野:いえ、最初は工芸の金属専攻でした。金属という素材の特性を用いた作品に憧れていたんです。それで、金属を溶かして変化した塊みたいなものを実際に作ったら、自分にはそういったものを作るバランス感覚がないことに気がついてしまって。それで、もとからあった動物や人物のモチーフを作ろうとしたら、金属は加工の技法が特殊なのと、技術習得にも時間がかかるので、これをすべて金属でやったら大変なことになると思い、適材適所の素材を組み合わせたほうがいいなと。それで廃材を拾い、チェーンソーを買って、独学で木彫もやるようになりました。
倉本:使う素材は金属と木以外にもありますか?
牧野:ほかにはFRPなどの樹脂も使います。動物や人間って目や爪など、部位によって質感が違うので、ひとつの素材で作り上げるよりも、部位によって変えたほうが自然なんですよ。
倉本:牧野さんの作品はただの動物ではなく、そこにヒトだったり、異なるものが合わさっていたりもします。そのユニークな発想はどこから来たのでしょうか?
牧野:先の相同器官の話の続きになるのですが、私は人間の目から見たときに、動物のどの部位がヒトに似ているのか……と、自分の身体と重ねて動物を見ています。そうすると共感できる部分や、うらやましいと思う気持ちが出てきて。私は作品で脊椎動物を作っていますが、背骨がある動物と限定すると、構造がけっこう似ているんですよ。例えば、エイに足の生えた作品があるのですが、これはちょうどエイの姿干しを調べていたら“ここが骨盤っぽいから、足が生えたとしたらここからだろうな”と思って作りました。そんな風に発想しながら組み合わせています。
倉本:一見、その独創性に目を奪われますが、そういった裏付けがあるからこそ、牧野さんの作品を見た時に、何かしらの気持ち良さを感じるんですね。
牧野:作品を作るときは動物の動きと一体になれるように、想像しながら作っています。私は自分が人間としてこの世に生まれてきたことを奇跡だと思っているので、もしかして、それが違う場合もあり得たのかなとも思います。もし、違う動物に産まれていたらどうなっていたのか、そんな思いが動物への興味や作品作りのもとになっています。