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ミカヅキツノゼミ(白♀、黒♂)

奥村巴菜Hana Okumura

作品概要

制作年
2016年
使用素材
陶土、銀
サイズ
100mm(幅)×150mm(高さ)×140mm(奥行き)/白
100mm(幅)×150mm(高さ)×130mm(奥行き)/黒

倉本美津留のこれやんコメント

とんでもない試行錯誤の末に生み出された、リアリティと創造性をもった虫の陶芸作品! 奥村さんが得意とするツノゼミやゾウムシは本来小さい虫で、それを巨大化しながらも細密に見せることで、見る側にいろんな発見をもたらしてくれます。最近はまだ発見されていないであろう新種の虫たちを、脳内で想像しながら具現化しているようですが、「ミカヅキゼミ」は既存種でありながらもミカヅキの部分に創作を施した作品です。
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STORY

倉本:奥村さんのコンセプトは陶虫(とうむし)、つまり陶器で作った虫ということですが、なぜそれを陶器でそれをやろうとしたのですか?

奥村:もともと土が好きで、私が好きな虫たちは地味な感じの種類が多く、偶然にも土っぽい質感だったので、土という自然の素材から作り出すのにも違和感がなかったんです。子供の頃から埴輪や土偶のような立体物が好きで、陶器は手で直接触れてカタチを作ることができるという意味でも性に合っていました。虫を陶器で作ろうと思ったのは大学2年生の頃で、先生には“六本足の虫を焼き物として立たせるのは無理だよ”と言われましたが、粘って頑張って、何とか卒業するまでには立たせられるようになりました。

倉本:すごいなぁ、長年持ち続けた思いが奇跡を生み出したわけですね。陶虫たちはそれだけの創意工夫があって、この造形が成り立っているという。昆虫の造形を陶器として制作するときは、どんな過程で作るのですか?

奥村:“手びねり”といって細くした粘土をくるくる重ねて形を作り、足は粘土の塊で形を作ってくっつけています。細い足で立たせるために、身体はなるべく薄く空洞にしています。色の違いは焼き方を変えていて、例えば炭と一緒に埋めて焼いたり、炭の割合を変えることで煤の吸着も変化するので、そういった焼き方の違いでグラデーションをつけたりしています。

倉本:奥村さんの作品からは見たことがないようなインパクトを感じます。“これは何なのかな?”って思って見たら、陶芸品であることに驚き、それでいて虫をリアルに再現しているという。奥村さんが作っている今回の作品のツノゼミや象虫はもともと小さい昆虫ですが、それを大きくして作品化していますね?

奥村:はい、肉眼では見えないくらい小さい部分が絶対にあって、それを大きくしたときに何か気がつくことがあるんです。私は虫が好きで、こういうところがかわいいとか、こんな種類がいるんだよっていうことを、大きくして見せたいんです。

倉本:最近の作品では、リアルさを超えてファンタジーすら感じることもありますね?

奥村:大学院生の頃に昆虫学者さんの研究に付いて回らせていただいたことがあって、そのときに図鑑に載っていない新種の虫が発見されるのを目の辺りにしたことがあったんです。虫は図鑑に載っていない種類が多いと言われているということを知って、自分の想像を絡めるようになりました。以前に、想像で作った黒くてトゲトゲの「ソウゾウムシ」という作品を観に来ていただいた昆虫の専門の方に、“これはオーストラリアの砂漠にいる象虫だね?”って言われて、あとで標本を見せていただいたら本当にそっくりで。私の想像力なんて、自然界ではまだまだ想定範囲内だということが分かったら、何だか悔しくなって、今はもっと奇抜なものを作っています。もちろん昆虫の構造を崩さず本当にいるかもしれないという範疇を超えずに、ですけどね(笑)。