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欠片-夜に漂う-

浅野井春奈Haruna Asanoi

作品概要

制作年
2020年
素材
樟、貝殻、アクリル絵具、他
サイズ
60mm(幅)×360mm(高さ)×55mm(奥行き)
特筆事項
作品は繊細ですので、台座の部分をお持ちくださいますようお願いいたします。
販売価格¥66,000(税込み)

これやんの作品コメント

独特のバランス感とユニークな造形を生み出す彫刻家、浅野井春奈さん。こちらはストーリーにもあった海に浮いたタコの亡骸がイメージにもなった作品です。漂うような身体は青系のグラデーションで塗られていて、貝は月にも見立てることができます。まるで月が海に浮かんでいる……そんな風景のようにも感じられる、不思議な立体作品です。
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STORY

倉本:浅野井さんはユニークな彫刻を作っていらっしゃいますが、現在の作風に至るまでの経緯を教えてもらえますか?

浅野井:保育園の頃から油粘土いじりが好きで、小学校の夏休みは陶芸教室に行っていました。それで美術に面白さを感じて、高校で進路を決めるときに“彫刻科がいいかな”と思い、彫刻の勉強をするようになりました。大学で彫刻科は粘土、石、木、金属から素材を選択しますが、消去法で決めました。粘土はどこでもできるけど、金属はあんまりピンとこなくて、あと、石は扱いがむずかしい……じゃあ木かという感じです。そのとき先生に“作りたい目標がしっかりとある人は木の形が魅力的になりやすい。やってみたら面白いんじゃないか”と言われて、木を選びました。

倉本:人物を作るようになったきっかけは?

浅野井:10歳年下の妹がきっかけでした。彼女が9歳のときに、その年齢のときにしかないというか、一瞬で消えてしまうような美しさがあると感じ、これは何かの形で記録しておかないと、と思ったんです。木肌と人肌は親和性があるというか、つながりがあるような気がして妹の像を作ってみました。それがきっかけで木の面白さに気づき、少年期から青年期にかけての少女像をベースにしていろんなシリーズの作品を作るようになりました。 

倉本:ちなみに粘土いじりをしていた子供の頃は何を作っていたのですか?

浅野井:豆を作ったり、人の顔をしたような犬を作ったり……今思えば、わりとアヴァンギャルドなものを作っていました。在学中は藝大ならではの“アカデミックなものを作ろう”みたいな風潮に順応して人物を作るようになったところもあります。でも、子供の頃に面白いもの、ヘンなものをたくさん作っていた自分もいて。それで、シリーズによっては今の人物像をベースにしながら子供時代の感覚に戻っていく、ということもあります。

倉本:そのシリーズが貝殻を用いた作品ということですが、実に繊細な彫刻ですね。

朝野井:貝殻と木を使ったシリーズを作ったのは、友人と貝拾いに行ったときに、拾った貝を何かに使いたいと思ったのがはじまりでした。ちょうどその時、身内のお葬式が重なっていたんです。火葬場でお骨を拾ったときに、それが貝殻やサンゴに似ているなあと思い、“みんな何か繋がっているのかな”と感じました。肉体は燃えるけど骨は燃えない。貝殻も骨みたいなものだから燃えないけど、木は燃える。だから木と貝殻は、肉と骨に置き換えられるなと。その二つの素材を組み合わせたら、どんな存在感の彫刻ができるかなと思い、作り始めました。

倉本:ひとつの角材から彫り出しているんですよね。

浅野井:貝殻のシリーズは角材の上に貝殻を置き、貝殻の形や動きに合わせて人物像を角材にドローイングして、それをもとに作っています。

倉本:どんな身体のカタチになるのかは、出会った貝によって決まるんでしょうか。 

浅野井:はい、貝の形から直感的に出てきます。だから貝拾いに行くのが楽しいんですよ。私はよく“フワーッ”と浮かんでいるようなフォルムを作りますが、小さい頃に家族と海に行ったとき、向こうの方にフワーッと立っているものが見えて。近づいてみたらタコの死骸でした。それが私にとって強烈な印象になっていて、その記憶をモチーフに作ることも多いですね。