I will read this world deeply
作品概要
- 制作年
- 2018年
- 使用素材
- 水彩絵具、紙
- サイズ
- 260mm(幅)×360mm(高さ)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:絵を描き始めたきっかけは何でしたか?
杉山:父親が歯医者で僕は長男だったので、歯学部を目指して浪人していたときの夏休みに気が変わってしまって。その頃、僕の友人が日芸に通っていて、彼らの話からデザインやイラストという世界を知って、そっちに興味を持ってしまったんです。同じタイミングで絵も描き始めて……浅野温子さんの写真をトレースして絵の具で描いたりしていました。美術の専門学校へ通い、たまたま湯村輝彦さんの事務所の引っ越しを手伝いをすることになり、そこから7年間ほど師事しました。
倉本:湯村さんとは引っ越しがきっかけだったんですね(笑)。その後のヒロさんの活動はどんどん広がっていき、僕はEnlightenmentをはじめ、広告やCMなどのデザイナーとしての制作物をよく見ていました。
杉山:そうですね、幸いなことに40歳になるまでにいろんなことを一通りやらせてもらい、もう一度このサイクルをやるのかと思ったときに、一度自分を見つめ直して。本当に自分がやりたかったのはアートだったことに気がついたんです。20代の頃にニューヨークで海外のアートを見て、アーティストになりたかった気持ちを思い出し、40代で現代美術のギャラリーに所属してアーティストとしての活動を始めました。
倉本:40代での再スタートだったんですね。
杉山:僕はグラフィックデザインの仕事をしてきましたが、いざ現代アートのフィールドに入ると、自分が積み重ねてきたものがまったく通用しなかったですね。なので、イチからコツコツとやりながらアートのフィールドで戦い続け、今に至っています。
倉本:アーティストとして活動されるようになり、今の絵のタッチはどうやって生まれたのですか?
杉山:僕は展覧会ごとに違った画風で描くので共通したタッチというはあまりないです。例えば今回持ってきた3枚の作品だと、まず水彩絵の具で描きたいと思ったところがはじまりで、“108枚描こう”と思って描いたうちの数枚です。水彩は自分に向かない画材だと思っていましたが、描いてみたらコントロールが効かないぶん偶然性があって、面白くなってしまいました。なので、先に何を描こうとは決めず、ただ色だけを決めて描き始めています。現代アートはコンセプトが先にあることが多いですが、僕の場合は最初に“描きたい”という衝動があって、そこからはじまっていきます。
倉本:色彩感覚が魅力的ですよね。
杉山:色で何かを表現したい思いはグラフィックデザインでもアートでも自分のなかに強くありますね。僕はすごくたくさんの色を使いますが、それがバラバラにならないようにしています。仕事の場合はディレクターとして俯瞰で見て、より多くの人々に届くものを意識しますが、絵を描くときは主観的に自分の内面に入って描き、それを気に入ってくれる一人に届けばよいと思っていて。その意味でも、僕には仕事と絵というふたつのやり方があることで、バランスが取れているんだと思います。