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世親

上路市剛Ichitaka Kamiji

作品概要

制作年
2017年
使用素材
シリコン、FRP、馬の毛、レジン、他
サイズ
300mm(幅)×680mm(高さ)×300mm(奥行き)
特筆事項
作品の保管・設置には高温多湿を避け、直射日光が当たる場所には置かないでください。
販売価格¥990,000(税込み)

これやんの作品コメント

「SICF16」準グランプリの受賞経験を持ち、人間のリアリティを追求する彫刻家、上路市剛さんが初登場です。こちらの作品は国宝である木造無著・世親立像の世親をモチーフにリアリティを追求した作品。一本一本植えたという髪の毛の造形に加えて肌には吹き出物があったりして、年齢を感じさせるシワなどの質感。徹底してリアルなのにそれと同時に、まるで世親がこの世に蘇ったかのようなファンタジーを感じさせてくれます。故人を彫像として残すという、彫刻の時系列を逆転させるという、唯一無二の表現です!
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STORY

倉本:上路さんは有名な仏像や彫像をよりリアルに再現するという独特の表現をしています。なぜこのようなことをやろうと思ったのですか?

上路:僕は心がドキドキするくらいに彫刻作品が好きで、観た作品をモチーフにして何かを作りたいと思ったのがきっかけでした。でも、石彫はリアルに見えても、意外とそうでもないし、仏像も肌色をただ塗ったように感じたので、そこに自分が興奮する感情を作品に盛りこみたいなと思いました。それで、今おっしゃってもらったように、彫像のモデルになった人たちを再現して、僕なりに彼らが本当にしたかったであろうことをやってみたかったんです。

倉本:人間のリアルさを再現する技術はどう体得したのですか?

上路:彫刻は高校生の頃に彫刻をはじめて、最初はFRPという素材を使っていました。ちょうどその頃にハイパーリアリズム彫刻が流行って、ロン・ミュエクという彫刻家のカタログを本屋で見かけたときに“これを作りたい!”と思いました。本格的に彫刻を始めたのは大学生ですが、僕は教育大学に通っていたので彫刻に特化した美術科があるわけでもなく、自己流でやっていました。技術は自分で身につけるしかなくて、金属や木材の加工の勉強もしました。続けるうちに僕がやろうとしていることは特殊メイクの領域に近いことが分かり、大学を出たあとで1年間特殊メイクの勉強をして、自己流ではできなかった不足分を補いました。

倉本:目や肌などに使っている素材は何ですか?

上路:目は自転車の回転部分の中心にあるベアリングの玉が原型ですが、これは球体としての精度が一番高かったので選びました。その球を模ってプラスチックに置き換えてから旋盤で加工をしています。肌はシリコンで、目はポリエステル樹脂、毛は天然の毛を使っていて、馬の毛や人毛、あと眉毛はミンクの毛を一本一本植え込んでいます。

倉本:モチーフに選ぶ作品は、本物を観てから作っていくのですか?

上路:そうですね、カタログや写真も大事ですが、やっぱり目で見るとエネルギーが違います。例えば、カラヴァッジョの作品は肉感がすごくて……あんまり語ると“気持ち悪い”って言われたりもしますが、それって普通の人にもある感覚だと思います。例えば好きな人の身体のパーツや筋肉の付き方だったり……それが美術の世界だと“そんなイヤらしい目でみてはいけない”とタブーにされがちなんです。でも、それって、ごく自然なことだと思いますね。

倉本:たしかに、こと彫刻家となったらそのようなフェチズムがないと再現できないですよね。上路さんは彫刻の新たな領域を切り開いていると思いますし、これからもっと人が驚くことをしていくと期待しています。

上路:この作風で活動をはじめて5年くらい経ちますが、現実的な話をすると僕の作品は一般的に売れるタイプのものではないです。リアルな彫刻って家に飾りづらいじゃないですか。やっぱり売れる作品は家に置いたときに、調和が取れるものなんですよね。それにコレクターさんは男性が多いから、それを考えたら女性を作ったほうがいい。かといって、僕はそういう作品を作ることには感性が動かないんです。だから、今は自分の作品が刺さる人たちに向けてやっていけばいいかなと思って、自分がやりたい表現へと突き進んでいます。