飛び出せ!祝い隊
作品概要
- 制作年
- 2020年
- 素材
- 30年位前の味の出た和紙、墨汁、顔彩、マーカー、金銀ボールペン、パステル
- サイズ
- 815mm(幅)×265mm(高さ)×26mm(奥行き)
- 特筆事項
- 倉本美津留先生とのダブルサイン入りの絵本「ねこのたまたま」お付け致します。
これやんの作品コメント
STORY
倉本:犬ん子さんが絵描きになっていたのはどんな経緯でしたか?
犬ん子:京都嵯峨美術短期大学のデザイン学部を専攻しました。卒業したのちは印刷会社で版下のデザインを作る仕事をしていましたが、やっぱり漫画家になりたいと思い、大好きだった漫画雑誌『ガロ』の編集部に漫画を描いて持っていきました。そのとき、たまたま編集長の長井勝一さんがいらっしゃって、作品を見てもらえることになり……「ストーリーはまだまだだけど、絵だけなら明日からでもイラストレーターになれるね」と言ってもらえたんです。
倉本:なんと!伝説の編集長にお墨付きをもらったわけですね。
犬ん子:でも、そのときは“漫画家になれないんだ”と、がっくりして帰りました(笑)。でも、そこから“漫画のようなイラストを描いて”という仕事がくるようになり、漫画家になれない気持ちを引きずりながら、イラストレーターとしての仕事をするようになりました。
倉本:犬ん子さんの絵には懐かしさとユーモアがあり、とても独創的です。どんなものから影響を受けたのですか?
犬ん子:浮世絵とか江戸時代の大衆絵画、例えば“引き札”と呼ばれる昔の広告チラシなどから影響を受けています。学生時代に赤瀬川原平さんの「滑稽新聞」が大好きで、そういった世界観も元を辿ると浮世絵があったりもして。高尚ではなくて庶民のための絵、それにまつわるサブカルチャーなども好きでした。
倉本:大津絵という民俗絵画も勉強していましたね。
犬ん子:ええ、私はわりとぼーっと生きている人間で、そうしていたら仕事がどんどんと減っていった時期があったんです。それまで仕事にしていたのが大阪の情報雑誌だったので、それに合った可愛い感じの挿絵を描いていましたが、やっぱり好きな和風な感じの絵が描きたいと思うようになりました。大津絵に「外法(げほう)の梯子剃り」という、七福神のひとりである福禄寿の頭に梯子を掛け、毛を剃る絵があるのですが、それを見たときに“こんなにも面白いが絵があるんだ”と衝撃を受けました。それで、たまたま京都に大津絵の教室を見つけたので、通うことにしたんです。そのあとからはイラストの仕事が来たときに、頼まれてもいないのに無理矢理和風のテイストをネジ込んでいくようになり、それが徐々に受け入れられていきましたね(笑)。
倉本:その意味でも、犬ん子さんは昔の日本の大衆絵画の面白さを、しっかりと現代に伝えていると思います。
犬ん子:そうなっていたら嬉しいですね。私がこういうスタイルの絵を描き始めたのは今から15年くらい前ですが、まだその頃は和風画をモチーフにする人は少なく、浮世絵や昔の日本絵画の人気もあまりない時代で、“こんなにもおもろいのになぁ”と思いながら描いていました。なので、私が絵を描くことで微力ながらもその面白さに気づく人が出てきたらいいなと思って、描いてました。今はそういった作風の方も増えましたし、展示も盛況になって嬉しいです。私も私なりに描き続けたいと思うてます。