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漂流【カモメ】

山田勇魚Isana Yamada

作品概要

制作年
2022年
素材
エポキシ樹脂、漂着物、砂
サイズ
120mm(幅)×220mm(高さ)×180mm(奥行き)

倉本美津留のこれやんコメント

現代の九十九神をモチーフにした美しい立体造形を生み出す山田勇魚さんの作品をご紹介します。こちらは砂浜から砂浜へと移動する漂着物をカモメで表現した作品です。これまでは台座に流木などを用いていましたが、カモメを載せる展示台を複数の漂着物で構成されていて、よりオブジェとしての魅力を高めています。ちなみにこの作品のカモメの中にはガラス瓶の破片などの漂着物が入っています。
SOLD OUT

STORY

倉本:山田さんのお名前の“勇魚”はクジラって意味で、しかも本名なんですよね? その山田さんがクジラの作品で世に出てるとはびっくりしました。てっきり作品ありきのアーティスト名だと思っていました。

山田:端的に言うとそうなります。父がつけた名前ですが、CWニコルさんの「勇魚」っていう本が由来になっています。クジラのように国境を超えて世界で活躍する人になってほしいという意味もあったみたいです。今となっては、けっこう名前に助けられているところもあります。

倉本:東京藝術大学を出られていますが、どんな風にして今の作風に辿り着いたのですか?

山田:藝大のデザイン科で学ぶうちに、作家として自分にとってのテーマが必要だと思ったときに、僕はもともと物を捨てられなくて、捨てられるものが可哀想と感じる気持ちがあって。で、それについて調べてみたら、日本には川や山だけでなく、長く使った生活用品にも神が宿る“九十九神”という概念を知って。そのイメージを作品にできたら面白いなと思い、双眼鏡のレンズが目玉になっていたり、電話の受話器が耳と口になったりと、道具が体の機能を拡張する感じで、本物の道具を用いつつ、生き物っぽく作り変えた作品を作っていました。

倉本:なるほど。今説明してもらった九十九神とは違い、この”帰港”シリーズは沈没船が中にあって外をクジラにするという造形で、これまでに作ってきた作品の作り方とは違うようにも感じます。

山田:大学院の修了制作で、自分の名前が“クジラ”であることと、今までやってきた九十九神をテーマにして何かできないかと思い、それで沈没船がクジラの姿になって、自分の港へ帰るストーリーをひらめきました。ちょうどその頃、アルバイトでアメの模型を作っていたのをきっかけに、透明の樹脂を使えば物自体は昔の姿で見られて、遠くから見たらちゃんと生き物にも見える造形ができる。それならジオラマ的に沈没した姿を模型内に入れられるし、接地面には砂を入れたらいい……と、いろんなアイディアがつながり、この形状へと辿り着きました。

倉本:なかに入っているものは軍艦ですよね? ここにはメッセージ的なものも込められているのですか?

山田:やっぱり日本で沈没船といったら軍艦なので、太平洋戦争で沈んだ船をイメージして作っています。メッセージ的なものとしては“戦死者の魂”と言われたりもしますが、この作品はあくまで“物”であって、日本で作られたものがどこかの海中で沈んでしまい、それが故郷に帰っていくというテーマなので政治的な意味合いは入れていません。ただ、見た人がどう感じるのかは、その人の自由だと思っています。

倉本:これから先、このシリーズはどんな目標がありますか?

山田:やっぱり本物を入れたいなと思っています。

倉本:クジラ?

山田:沈没船です。

倉本:めちゃめちゃでかいですね! 時間がかかったとしても、目標の実現に期待しています。