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片山穣Joe Katayama

作品概要

制作年
2023年
素材
綿布に染料
サイズ
410mm(幅)×410mm(高さ)×21mm(奥行き)

倉本美津留のこれやんコメント

ろうけつ染めという染色技法を用いて緻密な風景画を表現する片山穣先生が初登場です。こちらは銀座・昭和通りの夜景を切り取った作品。立ち並ぶビルと道路を行き交う車、暗闇と光のコントラストをドットを用いて見事に表現しています。ちなみに作品タイトルは描かれている場所の経度・緯度になっているので、地図で調べて訪れることもできます。
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STORY

倉本:片山さんは染色を用いて絵画のような作品を作られています。どんなきっかけでこの手法を使った表現をするようになったのですか?

片山:幼いころから色がすごく好きで、色えんぴつでもクレヨンでも、色をいっぱい使って描いていました。それもあって、色に特化した手法で作品を作りたいと思うようになり、大学では染色を専攻しました。友禅染めや型染めも染めものですが、模様を染めたり着物を染めたりと、工芸的なアプローチが強いんです。そのなかでろうけつ染めは、一番絵画的なアプローチができるので、この手法を使って絵画作品を作りたいと思うようになりました。染色を学び続けるうちに、染めの色の透明感やこの技法ならではの特徴が、画面の随所に現われてきて、今はそこに魅力を感じています。

倉本:作品の制作方法についても教えてください。

片山:先ほど言ったろうけつ染めという手法を用いています。ろうを溶かしたものを筆につけ、布に垂らしてマスキングをします。ろうは水分をはじくので、そこだけ色は染まりません。最初に白いところに色をのせて薄い色を染め、またろうをのせて、薄い色から濃い色にかけて少しずつ染めていきます。

倉本:点描画のようにも見えますよね。

片山:実は点はあとから染めています。最初に風景を染めて、そのあとで風景を作るためのろうを削ぎ落としてからドットをおいていくので、作品は2層のレイヤーになっています。

倉本:2層になっているとは、とても手間がかかっていますね。風景を描いた作品が多いですが、これまでに作風の変化はありましたか?

片山:根本的な部分や作品の空気感は変わりませんが、モチーフの扱いは変化しました。昔は絵の中に動物や人など、明確な対象物を描いていましたが、続けるうちに作品に自分の思いを込めることにピンと来なくなりました。作品を見た人がそれについて考えたり、自分の経験や記憶を振り返ることができる作品にしたい、鑑賞者にスポットライトが当たる作品にしたいと思うようになったことで、モチーフが風景へと変わりました。僕は現代アートとして新たな価値観を提示するとか、インパクトを与えるということに関心が強いわけではなく、それよりも僕にとってアートは“逃げ場所”なんです。そのツールとしての作品を作っていて、そういうものを生み出したいと思っています。

倉本:この風景にしようという決め手はありますか?

片山:作品テーマがチルなので、自分がその風景を見たときにチルアウトとかチルダウンと言うような“気持ちいい瞬間”があった風景を選んでいます。それと同時に、絵画ではないので、“この風景をろうけつ染めで表現できるのか”というジャッジも風景を選ぶうえでは大事です。絵の具と筆を描くのとは違い、染色では細かさに限界があります。染めの場合、ろうを染みこまさないといけないので、ろうの温度を高くして、チョンってやるだけでじわっと広がります。一筆一筆が修正不可能なので、そういうシビアさがある中で実際に作品になるのか、そんなことに悩まされつつも、それ自体をおもしろいと感じています。

倉本:困難な作業に楽しさを感じるというわけですね。でも、話だけを聞くと、ユルさがないというか、あまりチルできないようにも感じてしまいますが。

片山:それが、僕にとっては作品を作っているときこそ、一番気持ちいいと実感できる瞬間なんです。特に作品制作中は、ひとつひとつのドットを絵に置いていく時間がチルであって、この作業は自分にとってもすごく大事です。