雨中の花
作品概要
- 制作年
- 2017
- 使用素材
- NTラシャ
- サイズ
- 297mm(幅)×210mm(高さ)
- 特筆事項
- 雨雲の下、視界に見えるものの鮮やかさが弱まり灰みがかった青色に寄っていく様子を表現しました。
これやんの作品コメント
STORY
倉本:向後さんはSICF19で作品を見させてもらって、今回持ってきてもらった作品以外にも日本語のフォントなども作っていて、いろんな作品がありますね。
向後:大学がデザイン学部だったこともあり、表現するものをひとつひとつベースから考えていました。漢字も好きだったので、分解して考え直したりしていました。今回持ってきた「十二角」の作品は落書きしているときに気がついたものです。
向後:円のように見える部分が十二角形になっているんです。十二角形と言うと複雑な感じもするし、普段の生活の中では出会わない形だと思ってましたが、それが四角形と三角形で描けるということに気がつきました。シンプルな形の集まりで複雑なものができていると分かったら、すごく嬉しくなってしまって。それが日常の生活や仕事などのいろんなことに置き換えたときに、複雑に絡み合っているようでも、分解していけばちゃんと整理できるんだって。もともとデッサンを勉強しても全然ダメだったこともあったので、これを機にすでにある形をベースに何かを作ろうと思ったのがきっかけです。
倉本:こんな表現をしているのは向後さんだけだから、この表現をどの言葉で表わしたらええのか、ちょっと分からんのだけど……。
向後:私もまだ言い表わしかねています(笑)。ベースとしては地の紙に四角と三角の穴を開けていく……そこまでは切り絵と同じ手法です。私はもともと幾何学模様が好きだったので、切って配置を見ながら綺麗だなと思ってたんです。それで、作品にしていくにあたって、切った穴が寂しそうに見えたので、そこに嵌めてみようと。
倉本:しかも、糊を使っていないところもすごいやんか。幾何学模様のどんなところに惹かれたの?
向後:もともと数学が得意で、関数で表せる図形が好きでした。そのなかでも正方形とか長方形、平行四辺形のような整合性のある図形に惹かれていました。でも、それより前にデザインが好きで、そこから図形に辿りついたという順番です。さらに元を辿ると、子供の頃からやっていたドラムの影響が一番大きいかもしれないです。
倉本:ドラムを叩いていたんや、なんか几帳面な演奏をしそうやなぁ。
向後:はい、リズムの最小公倍数を考えてしまうタイプですね(笑)。変拍子はもちろんのこと、スティーブ・ライヒみたいなミニマル・ミュージックも好きでした。リズムがズレてきて“ああ、組み合った!”っていう感動も、図形よりも先にリズムで感じていたのかもしれないです。今、私が図形を使っているのは普遍的な美しさがあるからで、その力を借りて、私も制作をさせてもらえているんだと思うと、手が動いてしまうんです。