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躍動する生命体9

鈴木香南Kana Suzuki

作品概要

制作年
2019年
使用素材
ガラス
サイズ
250mm(高さ)×200mm(幅)×400mm(奥行き)
販売価格¥495,000(税込み)

倉本美津留のこれやんコメント

2016年にチェコで開催された『Stanislav Libensky Award 2016』にて入選経験を持つ、ガラスアーティストの鈴木香奈さん。こちらの作品は葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」を立体化したような造形! 北斎が波を捉えたように、カミーユ・クローデルというロダンの弟子が、北斎の波の絵をモチーフに彫刻した名作がありますが、それを超えています。人が作った物なのに、まるで自然が作り出した造形物のようにも感じる、見たことのない感覚をもったガラス作品ですね。
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STORY

倉本:お父さんもガラス工芸をやられているんですよね?

鈴木:はい、父親からは影響を受けています。でも、最初はガラスをやろうとは思っていなくて、絵を描いたりしていました。でも、漠然と何かを作りたいと思ってはいて、そのなかで自分にとって近しいものがガラスだったので、ガラスの専門学校に通うようになったのですが、まわりにはガラスが大好き!って思っている子が多くて。でも、私はただ漠然と物作りがしたい気持ちだったので、熱量が違いすぎて……。

倉本:みんなと違って、鈴木さんは何となくって感じだったんや(笑)。いわゆるガラスが大好きな作家さんに見られるような、素材の透明感や滑らかな質感といった作風とはまったく違いますよね。

鈴木:住んでいた場所が田舎だったので、ネコやカマキリみたいに身近にいた動物をガラスで作っていたのですが、動きもつまらなくてピンとこなかったです。その頃、溶けたガラスがドロッと型から流れてしまったことがあって、それを学校の人たちに見せたら“これ面白いね!”と言ってもらえて。それで、自分では失敗だと思っていたけど、動きもあるし、生き物にも見えることに気づけました。

倉本:作っている最中に自然とコラボレートできたということやね。一番良いミックスのコラボレートの瞬間を捉えて、作品化しているという。型から流れたと言うことだけど、型があるようには感じないですね。

鈴木:キルンという技法を使っていて、粘土で型を作って、石膏で型取って、ガラスを入れ、窯で焼き付けています。

倉本:この作品なんかはほんまに綺麗で、海の波の瞬間を捉えたようにしか見えないです。まるで僕らが見たい瞬間の状態で時間を止めたかのような……そんな印象を受けます。

鈴木:この作品はまず、下の部分を小さい型で作って、ガラスを入れて釜で熱を加えたらどう動くかを実験しました。それでガラスに面白い特徴が出たら取り入れて、その後で大まかな型をとって、ガラスを入れて作り直しました。ガラスは動くし、止まるんですよね。動いていても、動いた状態でガラスの時間を止めることもできます。本当はガラスに“グルグルって巻いてくれ”と念じていたのですが、温度が高すぎたので、予想外の形になりました。でも、これはこれでいいかなと。

倉本:それがこの作品の躍動感に勢いになっているんやね! 自分の意図しない偶然性というか、自然の力を借りることで思った以上にすごいものが生まれた! っていう実感があったんじゃないですか?

鈴木:そうですね。やっぱり自分の想像だけではなく、ガラスが出してくれるものを取り入れようと思っています。私にとってはガラスの特性や魅力をちゃんと出せているかどうかが大事で。ただ、型の中に入って縮こまっていたら死んでいるのと同じだから、ちゃんと出てきてもいいんだよっていう。そういう意味でも、最初に目指していた“生き物感”が、今でも頭のなかにありますね。

倉本:だから鈴木さんの作品は、躍動する生命体なんや!