Layered series 6
作品概要
- 制作年
- 2021年
- 素材
- ガラス
- サイズ
- 80mm(幅)×155mmm(高さ)×80mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:お父さんもガラス工芸をやられているんですよね?
鈴木:はい、父親からは影響を受けています。でも、最初はガラスをやろうとは思っていなくて、絵を描いたりしていました。でも、漠然と何かを作りたいと思ってはいて、そのなかで自分にとって近しいものがガラスだったので、ガラスの専門学校に通うようになったのですが、まわりにはガラスが大好き!って思っている子が多くて。でも、私はただ漠然と物作りがしたい気持ちだったので、熱量が違いすぎて……。
倉本:みんなと違って、鈴木さんは何となくって感じだったんですね(笑)。いわゆるガラスが大好きな作家さんに見られるような、素材の透明感や滑らかな質感といった作風とはまったく違いますし。
鈴木:住んでいた場所が田舎だったので、ネコやカマキリみたいに身近にいた動物をガラスで作っていたのですが、動きもつまらなくてピンとこなかったです。その頃、溶けたガラスがドロッと型から流れてしまったことがあって、それを学校の人たちに見せたら“これ面白いね!”と言ってもらえて。それで、自分では失敗だと思っていたけど、動きもあるし、生き物にも見えることに気づけました。キルンという技法を使っていて、粘土で型を作って、石膏で型取って、ガラスを入れ、窯で焼き付けています。
倉本:この作品は大きな重量感がありますが、学校の卒業展示で優秀賞を取った作品とのことですね。
鈴木:これは実験段階のときに面白いと思ったテクスチャーがあって、それを大きい形にして作ったものですね。抽象的な形をスケッチして、それと一緒に先程のテクスチャーを粘土で作っている段階でつけていました。前に赤い色を使ったことがあったのですが、赤だけだとグロテスクになると覆ったので、もう少し柔らかい色や明るめの色を入れました。
倉本:溶けた状態のガラスは動きますから、それが生き物の血液が動くのと似ているというか。
鈴木:本当に血液みたいに見えたりすることもありますね。
倉本:鈴木さんの作品は躍動感という言葉を、視覚的に表現しているのだと分かりました。
鈴木:そうですね。やっぱり自分の想像だけではなく、ガラスが出してくれるものを取り入れようと思っています。私にとってはガラスの特性や魅力をちゃんと出せているかどうかが大事で。ただ、型の中に入って縮こまっていたら死んでいるのと同じだから、ちゃんと出てきてもいいんだよっていう。そういう意味でも、最初に目指していた“生き物感”が、今でも頭のなかにありますね。
倉本:だから鈴木さんの作品は、躍動する生命体なのですね!