小さなまなざし
作品概要
- 制作年
- 2022年
- 素材
- 羊毛、針金
- サイズ
- 130mm(幅)×140mm(高さ)×85mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:かわさきさんは可愛らしい犬の作品を作っていますが、どのようにして今の作風になっていったのですか?
かわさき:犬は子供の頃から飼っていまして、物心ついたときから動物と絵を描くことが大好きでした。それもあって、洋画科のある美術大学に進学しました。
倉本:洋画を専攻されながらも、今作っているのは立体の作品ですよね。どのように平面から立体へ移行したのですか?
かわさき:私が通っていた大学の洋画科はわりと自由で、自分が表現したい方向であれば、平面でなくても、立体や映像でも、課題によって自由にやることができました。犬に特化した作品を作るようになったのは、在学中に自分が大好きなもののほうが作り込めると思ったのがきっかけでした。あるとき、大きめの立体作品を作る授業があり、60センチくらいの子犬の作品を作りました。そのときは今の羊毛フェルトではなく、スタイロホームという断熱材の表面にセメントを塗って仕上げたもので、硬い質感で今とは全然違いますが、この制作経験が大きかったと思います。
倉本:今とは違う素材だったんですね。
かわさき:羊毛を使ったのは卒業制作がはじまりでした。最初は木で作ろうかなと考えていましたが、先生に相談したら“あなたの愛情を表現したいのであれば、もっと違う素材があるんじゃない?”と言っていただいて。ちょうど羊毛フェルトで人形を作るのが流行り始めていたのに加えて、この素材ならもっと愛情が込められると思って選びました。卒業制作では犬に対する“愛情”をテーマにして、フェルトで3匹の子犬が眠っている作品を作りました。それがきっかけで羊毛を使うようになり、ずっと続けています。
倉本:作品はどのように作っているのですか?
かわさき:フェルトの素材は羊の毛をふわふわの棉みたいに加工したもので、羊毛フェルト専用の針で棉状の毛を繰り返し刺していきます。刺すことで中の毛と毛が絡まって塊になるので、ひたすらチクチクと刺して形を作ります。針金の骨組みが入っていますが、ほとんどは羊毛でできています。細かい表現ができる素材なので、最初は地肌のイメージをピンク色の地で作り、最後に毛を生やして仕上げるという感じです。
倉本:その地道な作業がこのリアルな質感を生むわけですね。愛情を込めて作品を育てていく、そんな印象を受けます。
かわさき:制作では可愛いとか、愛おしいという気持ちを大事にしています。私自身、作品を通じてそういう気持ちを共有したくて作っているのかなと思います。