Rabbit
作品概要
- 制作年
- 2019年
- 使用素材
- 油絵具、キャンバス
- サイズ
- 60mm(幅)×80mm(高さ)/作品
223mm(幅)×170mm(高さ)×53mm(奥行き)/額装
これやんの作品コメント
STORY
倉本:この作品を見ると、すごく写実的でテクニカルな絵ですね。どういう経緯でこのようなアーティストになったのですか?
中村:最初、武蔵野美術大学はパソコンでデザインをする学科に入ったのですが、あんまり肌に合わなくて。それで、油絵の学科が隣にあったので遊びに行ったら“これだな!”と、筆で描く楽しさを発見して、中退して、東京藝術大学の油絵科に入りました。でも今、油絵を描く人って普通の絵を描かずに、絵の具をぶちまけたようなものばかりで……そういう僕も、もともとはそのスタイルを何年もやっていたんですが、反骨精神が強いせいもあって、アートって作品がデカくて変わった物がもてはやされる風潮があったから、“逆、やっちゃうよ!”みたいな(笑)。それですごい小さい絵を(油画で)普通に描くってことをやってみたんです。
倉本:捻くれたら西洋の古典油画というオーソドックスなところに辿り着いたと。
中村:“そういうのって時代遅れだよ”って、誰も勉強しないんです。上野の西洋美術館にある16世紀の巨匠の絵を見たら“普通に描いたら西洋人に勝てないし、だったら新しいスタイルをやる”って人が多くて。それで、僕は“何で奴らとガチンコでやり合おうと思わないんだ!”と。
倉本:油絵でここまで細密に描くのは、テクニックがないと絶対できないですよ。
中村:最初は描こうとしても全然できなかったです。手も動かないし、そもそも色が難しかった。例えば白い毛を描こうとして白と黒を混ぜても、求める色になりませんでした。それで海外の文献を調べたら、昔の画家はカッスルアースっていう焦げ茶と黒の中間色の顔料と白を混ぜて、白い物を描いてたことが分かって。それで、色というのはすべて、まわりの色との対比からできていることを知りました。自分の作品では白に見える背景には、グリーンっぽい茶色を使ったりしています。そういう古典的な技法って“知の結晶だな”って。
倉本:ちなみに動物を描いているのは、毛の表現の難しさに挑みたかったからですか?
中村:最初は人物がいいかなと思ったのですが、美人とされる顔って今と10年前でもけっこう違うのでやめました。なぜなら、100年先に見ても良い作品として残したい野望があるので、猫にしたのは時間が経っても変わらないと思ったからです。でも、今の作品は第一印象ですごく真面目な人って見られちゃうのが、ちょっと悩みなんですよね。
倉本:なるほど!(笑) でも、話聞いてじっくり見て“これヤバい!”ということが分かってきました。モチーフは猫とウサギ以外にもありますか?
中村:この2種類だけです。ウサギを描いているのには理由があって、昔の巨匠で(アルブレヒト)デューラーって方がいて、その人が水彩でウサギを描いた色付きのデッサンが、小学校の教科書に載っていて。“うまいやん!”って思ったからなんです。“勝負して、超えたい!”って。
倉本:デューラー超え! 自分で超えることができたと思いますか?
中村:いい勝負ができているなと、思ってます。あと超えたいと思っているのがフェルメールですね。
倉本:スゴイ! 実はめちゃめちゃ挑むことで生まれた作品なんですね。