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豊海健太Kenta Toyoumi

作品概要

制作年
2020年
素材
漆、卵殻、朱、アルミ板
サイズ
700mm(幅)×700mm(高さ)×3mm(奥行き)
特筆事項
【取り扱いに関して】
・漆の塗膜は、酸やアルカリにも強く、お湯などの熱さにも強いですが、弱点は乾燥と直射日光です。直射日光の射しこむ場所に置くことは避けて下さい。
・手入れをする際、クレンザーなどの研磨剤で表面を磨いたり、タワシを使って洗ったりすると傷がつきます。柔らかい布で拭いてください
販売価格¥385,000(税込み)
販売応募期間:2024年4月8日〜5月8日まで

倉本美津留のこれやんコメント

工芸の卓越した技術を用いて、確固たるコンセプトを持ったアート作品を制作する豊海健太さんがこれやんに初登場です。こちらの作品はクマの頭蓋骨をモチーフにした作品で、アイヌの伝統儀式である「イオマンテ(熊送り)」から着想を得て制作されています。豊海さんにとって“骨”は生と死の境界であり生命の名残を体現するもの。砕いた卵殻を緻密に配置して表現することで、圧倒的な立体感を生み出しています。漆ならではの漆黒の艶を、ぜひ購入して実物を体感していただきたい作品です。
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STORY

これやん:豊海さんは工芸の技術を生かしたアート作品を制作していますね。まずは経歴からお話を聞かせてください。

豊海:子供の頃から絵を描くのが好きで、細密な版画のような絵をペンで描いていました。工芸系の大学に行ったのは目指していた大学とたまたま入試の内容が同じだったからです。画家を目指して美大に入るはずが工芸系の大学に進学して、最初はどうしたら良いのか分からずにいたのですが、先生に“絵が上手なら、漆で平面に描いてみたら?”と言われたのと、漆の平面っぽい作品をみたときに、漆の黒い艶と素材感に心がときめきました。

これやん:漆に絵を描くというのは技術が必要ですよね。

豊海:絵のようにイメージを描くこと自体、漆だと技術がないとまったく表現できないんです。そのもどかしさと同時に面白さを感じました。僕はビデオゲームが好きなのですが、やりはじめると本当にそれしかやらなくなってしまうから今は封印していて……でも、工芸にはゲームの感覚があるんです。工芸のいろんな技法を習得したり新しい素材を知ることは、ゲームのアイテムを集めてレベルをあげていく感じに近いというか。それでいて僕は難しいゲームほど面白いと思うタイプなので、技術を修練していく必要がある工芸に向いていたのだと思います。もし油彩をやっていたら創作活動自体を辞めていたかもしれません。

これやん:豊海さんの代表的なシリーズでもある漆と卵殻を用いた表現について教えてください。

豊海:はじめての卵殻を使ったのは、学生のときに制作したHIVウイルスをテーマにした作品でした。漆の卵殻技法は昔からある技法で、漆では出しにくい“白”を表現するためのものですが、僕にとっては卵殻は白というよりも“骨や化石”のイメージがありました。それでウイルスを卵殻=化石で表現し、過去のものになったという未来からの視点を作品で表現しました。この制作で手応えを感じ、この表現方法を自分の軸にしようと思いました。

これやん:ウイルスをモチーフにした理由は?

豊海:自分が好きな言葉に“望遠鏡は、宇宙の大きく遠い構造を人間のスケールへ縮小した。顕微鏡はその正反対の働きをし、地球上の物体、とくに生物の小さな構造を、人間のスケールへ拡大した”というものがあって。僕は大きいものを小さくするよりも、小さいものを大きく広げることに面白さやロマンを感じていたのが理由のひとつです。しかも顕微鏡を覗くサイズよりも大きかったら、それを見た人が受ける感覚が変わるなと思ったんです。加えて作品が大きいことで、見た人が漆の作品の中に映り込み、その世界に入り込んで浮遊する感覚も生まれる。僕は昔から地下鉄の窓の映り込みが好きで、あの心地よい感覚と漆の映り込みは近くて、それも漆が好きなところですね。

これやん:お話を聞いて、少年的なワクワクするような視点と工芸ならではの高い技術力が合わさることで、魅力的な作品が生まれていることが分かりました。

豊海:僕自身、中二病的なところは今でもすごくあると思っています。収集とか昆虫標本とかが好きですから。それに浮気性なところがあるので、漆と卵殻の表現を軸にしながらも、他にも玉虫の羽を使った作品を作ったりもしています。僕は素材の魅力を出せる範囲で分解し、一見すると何か分からない状態にしてから再構築しています。今言っていただいたように、作品を通じて工芸をもっとワクワクさせたいなという気持ちもありますね。