Beautiful Day
作品概要
- 制作年
- 2018年
- 使用素材
- 限定キャンバスプリント
- サイズ
- 1000mm(幅)×1000mm(高さ)
- 特筆事項
- エディション/3
これやんの作品コメント
STORY
倉本:トラックというモチーフ自体がなんとも意外で驚きました。
高橋:この作品はプリントですが、見てわかるように僕は”ザクザク”って描き殴るようなタッチです。基本的には一筆書きのような描き方で、原画のサイズは小さいです。大きく描くような仕事でも、あえて大きくは描かずに原画をプリントで拡大します。自分の個展だと原画を出したりもしますが、時々それもわざと拡大したりします。イラストレーションのこだわり的なところで、あえてプリントしています。この作品は限定3つだけと決めて、エディションで刷りました。
倉本:線で描いて濃淡をつけていくような描写の方法は、どんなふうに体得されたのですか?
高橋:イラストの仕事を始めた頃から線画をやっていましたが、その頃は線をスーッと1本流すような描き方に、当時の流行だったカラートーンで色をつけるという、わりとカラフルな手法でした。それが時代的にも受けたのですが、そのポップな部分をどんどん排除していくうちに今の感じになりました。僕の作品は一見してリアルだと思われることもありますが、実際にはリアルではないです。対象物の形そのものを守ってはいますが、いい加減に”らしく”描いています。この「Beautiful Days」で描いたトラックはよくできた感じに見えるかもしれませんが、めちゃくちゃいい加減に端折っているのが面白いかなと。ザクっと筆で描いて荷台は四角で……って感じですね。細部までリアルに描く人はスゴイなと思いますが、イラストは写真とは違うものだし、言うなれば“記憶のある風景に置き換えている”わけです。僕は風景も描きますが、風景の記憶ってすべてを精細に覚えているわけではなく、一本の木や太陽の光だとか、自分が印象的なものが残っている。だから、それだけを描いて全面には描き込みません。それに自分の記憶の部分だけを描けば楽ですから(笑)。
倉本:いろんな方の作品が展示されているなかで、はじめてキンタローさんの作品を最初に見たときに、他にはない独特なタッチだなと思いました。例えるなら墨絵……雪舟(水墨画家)のような感覚を見事に表現していて、インパクトを感じました。今、キンタローさんの話を聞いて、小さく描いて大きく拡大することで他にない質感が生まれているんですね。だからこそいい意味でのスカスカ感があるのだとわかりました。
高橋:もちろん大きいサイズで描くこともできますが、あえて拡大することで小さく描いたムラとかキャンバスの目が出てくるのが好きだから、プリントして見せたいと思っています。あとはデザインもやってきたので、余白を埋めない意識もありますよね。 余計なところを排除しすぎた感覚があるのかもしれません。
倉本:イラストの仕事とは別で、自分の作品をずっと描き続けてきたのですか?
高橋:いえ、本来は仕事でしか画は描きませんでしたが、最近は展示をやるようになったのでそのために描くことが増えました。でも、テーマ立てて描くようなことはしません。人物にしてもファッション画的だったり、美人画的、あるいは絵本のように……とさまざまに描きますが、描き方のマインドは同じです。僕は困ったことに幅が広すぎるから、子供向けのアニメーションまでやっているんです。何にもできないから、何でもやっちゃうのかもしれません(笑)。