Mortar(No.13)
作品概要
- 制作年
- 2020年
- 素材
- 和紙、アルミ
- サイズ
- 290mm(幅)×290mm(高さ)×7mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:中村さんがアートに興味を持った経緯について教えてください。
中村:私の祖父(中村琢二)が画家でして、幼い頃からアトリエでモデルをしたり、絵を描いたり作品を作ったりしていました。そのなかで絵よりも図工というか、立体的なものを作るほうが好きだなと思っていました。というのも、私の祖父は絵描きとしてかなり成功していたこともあり、同じ道を歩んでもちょっと難しいなとも思っていました。
倉本:その後はどうなっていったのですか?
中村:ずっと美術をやりたいと思っていてアメリカに学びに行きましたが、総合大学を選びました。というのも、その時に興味があった哲学をはじめとしたいろんな分野の学問を学び、それらを最後にアートへ集約したいと考えていて、大学を卒業したのちに美術系の大学院へ進学しました。学生時代はニューヨークにいましたが、そこで911が起こり、世界貿易センタービルの倒壊を間近で体験しました。
倉本:それは貴重な体験をされたのですね。911の影響はどんな風にして作品へと生かされていったのですか?
中村:一言でいうと、アメリカでの体験はドラマチックでダイナミックなものでした。ビルが崩れ去る様を見たとき、死を意識することで感情とは違う力が自分のなかで湧き起こるのを感じ、それが生であることが分かったんです。その体験が私の作品に一貫した身体性の表現になっていき、そこに日本ならではの静けさや洗練された緊張感といった感覚をミックスしていくことで、今の作風へと辿りつきました。
倉本:中村さんの作品にはさまざまな作風がありますが、なかでも代表的な銃弾で物体を打ち抜いた作品があります。ちなみにこれはどのように制作しているのですか?
中村:銃弾の作品はアメリカの射撃場へ赴き、実際に作品となるものを設置させてもらい、それを私が撃ち抜いて制作します。
倉本:銃で撃つという表現のどんなところに魅力を感じていますか?
中村:アメリカの射撃場は標的までの距離がおよそ100メートルありますが、撃ってみると銃弾が不規則な動きをして、なかなかまっすぐな弾道になりません。でも、そういったブレやズレが自分の魂とこだまして、心地良く感じるんですよ。どれだけ計算してもその通りにならない“何か”があるというのが、射撃による表現の魅力です。この作品は反射する素材を使うことで、そこに映り込んだ人が視覚的・思考的に被弾します。そのときに私が911で感じた“生のパワー”を感じとってほしいと思っています。