Round Round Wonder World “golden green”
作品概要
- 制作年
- 2017年
- 素材
- 木、油彩
- サイズ
- 60mm(直径)×40mm(高さ)
倉本美津留のこれやんコメント
STORY
倉本:田村さんは自然をモチーフにした作品を創作していますが、自然のどんなところに魅了されたのですか?
田村:私は長野出身で、360度を山に囲まれた自然の中で生まれ育ったので、東京に出てきたとき、建物以外に視界を妨げるものがないことに衝撃を受けました。上京後は近所の(代々木)公園で出会った木々たちがまるで友だちのようと言うか、自分と近しいものに再会したような癒しを感じました。そのときにどんなに自分が自然を好きなのかを再認識しました。その気持ちを絵画と融合できないかと思っていました。でも大学時代はあまりパッとしなくて、何か新しくないというかずっと模索をしていました。勉強したい気持ちが強かったこともありロンドンに行き、海外のアートに目を向けていくと、コンセプチュアル·アートでも自然をテーマに扱う作家さんがたくさんいて、作品もすごくかっこよかったんです。それで、自分は間違っていなくて、技量が追いついていないだけだと思えました。
倉本:そこから、現在の地平線を表現する作風へと至ったのはどういう経緯ですか?
田村:留学中、英語がうまく話せずに挫折を感じたとき、セントポール·カテドラルという大聖堂に登ってみたら、東京よりももっと水平線まで視線を遮るものがないことに、久しぶりに衝撃を受けました。そんなロンドンの地平線を見て、それまで感じていたプレッシャーから解放されて“もっと描くことに対してシンプルでも良いんだな”と思えたんです。それがのちに“地平線シリーズ”と呼ばれるようになる、シンプルな空と大地でした。
倉本:風景をそのまま描くのではなく、風景を集約したような形ですよね。
田村:描いているのはどこでもないどこかですが、“なんか見たことある”とか“夕日ですよね”とか、みなさんが自由に解釈してくださるのが面白いなと思っています。絵にすることで部屋という空間に自然が運びこまれるので、窓をひとつ付けるのと同じような感じの作品なんです。ですから、大きなサイズで描いたり、小物として表現したりしています。
倉本:一見して抽象的な表現ですが、描かれているモチーフは一貫して自然ですよね。
田村:以前は植物が枯れる様子や色の美しさに惹かれて、もっと抽象画寄りな作品を描いていました。こういった水平線を描いていると「現代作家」とも呼んでいただいたりもしますが、自然を描いているという軸がぶれなければ、どんな表現をしてもいいかなと思っています。自然をどういう見方で捉えるかで作品のパターンも変わっていきます。幼い頃、学校まで3キロの道のりを小学校·中学校の9年間、毎日歩いてずっと自然を感じていました。その体験が自分の強みになってるんじゃないかなと。自分の中にあるのは、そういう風景から得た何かだと思っています。