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Crimson

前田恭兵Kyohei Maeda

作品概要

制作年
2019年
使用素材
七宝混合技法、銀、銅、真鍮
サイズ
300mm(幅)×130mm(高さ)×300mm(奥行き)
販売価格¥495,000(税込み)

これやんの作品コメント

伝統工芸技法の七宝焼き。修練が必要な七宝の技巧を若くして備え、数多くの賞歴を持つ気鋭作家の前田恭兵さん。彼が昨年より制作を開始したという七宝の立体造形作品のなかでも、これやんにお持ちいただいたのは今回の取材のために作った最新作品であり、前田さんにとって現時点での最高の力作です。七宝で表現するのが難しい赤色の釉薬や有線七宝と呼ばれる高い技巧によるウロコの表現など、前田さんが研究の末に生み出した七宝の立体金魚は、ここでしか手に入らない貴重な作品です。
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STORY

倉本:前田さんは伝統技法の七宝で立体作品を作るという珍しい活動をされていますが、そもそも七宝に興味を持った理由は何でしたか?

前田:昔から祖父が釣り針職人をしていて、僕も小さい頃から細かい作業が大好きだったので、将来何をしようかと考えたときに消去法で美術になりました。最初はジュエリーを作る仕事につきたいと思って工芸科の彫金研究室に入り、金属を彫ったり、叩いて半立体を作ったりしながら、授業以外の時間はもともと好きだった絵を描いていました。七宝との出会いは大学4年の課題の時で、七宝は平面作品が多いのですが、そこで工芸でありながらも絵が描けると思ったんです。金属の加工と絵という、これまで自分がやってきたことをドッキングできて、一気に道が開けました。七宝は技法的にすごく難しくて、全然思い通りにならないのですが、トライアンドエラーを繰り返しながらも、自分が理想とするイメージに近づけていくのが面白くて、そのうちに立体作品を作るようになりました。

倉本:七宝と言えば平面か壺で、こういった立体造形は見たことがないです。

前田:たぶん日本でも数名くらいしかやっていないと思います。七宝は金属板の表面にガラスの粉をのせて700~800度で焼きつけるので、平面作品が多いのですが、これが立体となると金属の彫金技術が必要になりますし、七宝は片面だけにガラスを乗せると収縮して銅版が反り上がってしまうので、内側にも綺麗にガラスを施さないといけないという……。

倉本:つまりただでさえ難しい七宝なのに、立体にすることでめちゃめちゃ難しくなっているんですね。

前田:平面なら2~3回焼けば形になりますが、この金魚のような複雑な立体作品になると内側に万遍なくガラスを入れるだけでなく、鱗の部分には“有線七宝”といって金属のリボン線を一つ一つピンセットで置いていき、その中にガラスの粉を置いていくという……明治時代に超絶技巧と言われた一番スタンダードな技法を用いていて、合計で30回くらいは焼いています。

倉本:どのくらいの試行錯誤をしてきましたか?

前田:とにかくたくさんの失敗をしてきていて、その経験値がこの作品に集約されています。七宝はどれだけ失敗したかだと思いますね。今までずっと平面での七宝表現をやってきて、立体は去年初めて発表したのですが、クオリティ的にまだダメだと思い、一年間研究して形にしてきました。立体だとこの金魚が3作目で、これまでで一番力が入った作品です。

倉本:前田さんにとって、七宝の魅力は何でしょうか。

前田:やはり、残る物ということですね。数百年経っても色が変わらないし、日本だと正倉院に入っている七宝焼きがあり、それも色が変わらずに存在していると言われています。あとは作っていても、なかなかうまくいかないのが面白いですね。達成感とともに、次への反省点が必ずついてきますから(笑)。