透きの葉 ーひとつ-
作品概要
- 制作年
- 2024年
- 素材
- ガラス、絹糸、籐
- サイズ
- 300mm(幅)×400mm(高さ)×60mm(奥行き)/額装サイズ
これやんの作品コメント
STORY
これやん:佐野さんは息をガラスに吹き込み、“空気”を表現しているアーティストです。まずはどういう経緯でこの表現をするようになったのですか?
佐野:大学生の頃にガラスで物を作ったときに、この素材の不思議さと美しさに惹かれて、これで作品を作りたいと思いました。その後、ガラス造形研究所で工芸を勉強しながら、ちょっと悩んでいる時期に、工房に捨てられていた吹いたままのガラスを見て、“これが一番おもしろくて綺麗なのは何でだろう?”と思ったんです。
これやん:なるほど、吹きガラスの残骸が生みだした発想でもあったんですね。
佐野:吹きガラスは紀元前1世紀に生まれた器作りに適した技法ですが、それ以外の見方でこの技法を捉えられないかと考えていました。物作りには削ったり付け足したり切ったりと、さまざまな工程がありますが、吹いた息がそのまま形を作るのは吹きガラスしかないし、やっぱりこれはおもしろいなと感じて、それを端的に見せられるような作品を作りはじめました。
これやん:それがビニール袋に息を吹き込んだ作品に通じたのですね。あれは実際にどうやって作っているのですか?
佐野:実際、ビニール袋に“ふうー”って息を吹いて、それと同じ体積の粘土で型どって、ガラスを吹き込めるような型に起こします。そこに実際に息を入れて蓋をして作ります。風船の作品は型を使わずに、私の肺活量だけで“ぷーっ”と吹いているだけです。ちょっと図々しい発言だと思うのですが、これらの作品は自分の息が美術作品としての価値を持つのではないかと思って作っています。それもあって、ほとんど価値がないというか、あえて安く買えるビニール袋や風船をモチーフにしています。
これやん:佐野さんの作品は無色ですし、まるで工業デザインのようにシンプルな質感があります。
佐野:やっていることが、今説明したような発想がもとになっているので、それを美術作品としてつなぎ止めるには、物としての緊張感や完成度の高さが必要だと思います。なので、物としての美しさには気を遣いますね。
これやん:新しくお持ちいただいた作品は、いんすぴ展Vol.5の出品作品「ゆかり」から派生した作品です。
佐野:「ゆかり」はガラスの糸状にして水引として表現したのですが、すごくおめでたい感じもあり、これなら空間を祝福できる作品になるなと思いました。そのあとで沼津クラブというホテルで展示の機会があり、「ゆかり」をモチーフにしつつも、沼津の景勝地でもある千本松原の松の葉を意識した造形の作品を作りました。松の葉を束ねたときの心地のよいバランスを探りながら作りました。見てほしいのはガラスがすっと伸びる気持ち良さ、ガラスが光を留める感じです。作品を飾った場所が心地の良い空間になればと思っています。