MASK-MAN
作品概要
- 制作年
- 2015年
- 使用素材
- アクリル、洗面器
- サイズ
- 300mm(φ)×90mm(高さ)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:下村さんがイラストレーターを志したのはどんなきっかけでしたか?
下村:僕はデザイン系の学校に通っていたのですが、当時は綺麗に線を引くことがデザイナーなるために必要なことで、“向いていないな”と思ったんです。でも、イラストレーターになろうと思ったのは、その業種をまったく知らなかったのも大きいですね。かれこれ30年近くイラストレーターとしてやっていますが、はじめたときは当時のバンドブームのように上手い下手とかじゃなくて、何か面白いものがあれば“誰でもできる”という風潮があって。そんな勢いに乗ってイラストレーターとして活動をはじめました。もちろん実際にはそんな甘い世界ではなく、とても厳しい部分の多い職業だったわけですが。
倉本:勢いでイラストレーターの世界へ飛び込んでいったわけですね。
下村:もちろん一生懸命努力はしてきましたが、だからといって常に結果がついてくるわけではないのがイラストレーターの厳しさでもあります。僕の場合は描き始めた頃にアクリル絵具を厚く塗るスタイルが主流だったので、そういった表現のなかで自分らしいタッチを学んでいきました。
倉本:どんなふうにして描くことが多かったのですか?
下村:図鑑や写真を見て描くものを決めていきます。自分では似せて描いているつもりなんですが、どうも性格的に適当なところがあるせいなのか、そうはならないんです(笑)。でも、似ていないほうが個性にもなるし、それでいいかなという感じでやっています。
倉本:下村さんの強い線のタッチは、いつ頃生まれたのですか?
下村:グラデーションを意識していったら、自然と太い線の表現になっていきました。ちょうど20代の半ばくらいですね。「ザ・チョイス」に入選して有名になりたいと思っていたものの、なかなか結果が出ず……それでも諦めずに応募していたら、32歳の時チョイスの「第88回」で、横尾忠則さんに入選させてもらうことができました。横尾さんに選んでいただいたのだからこれは貫くしかないと思い、その頃のタッチで今も描き続けています。
倉本:洗面器に絵を描くのはどんな経緯でしたか?
下村:このシリーズは5年くらい前に始めたのですが、単純に洗面器というか丸いレリーフが面白いと思って描きはじめました。グラフィックは自分のサインを入れようとしたときにそれだけじゃ面白くないので、円の形に合わせてグラデーションをつなげるように線を組み合せていった結果です。モチーフは考えずに描きたいものは衝動に任せているのですが、結局それが自分が好きなものになっていますね。