家族の肖像
作品概要
- 制作年
- 2020年
- 使用素材
- 鉛筆、顔料プリント、キャンバス、レース、リボン
- サイズ
- 398mm(幅)×306mm(高さ)×38mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:都築さんの描く作品は少し無機質な人物の表情といい、みる側の捉え方に隙間がある作品ですね。
都築:描きはじめた頃から、人物の目がどこを見ているか分からないような画を描いていました。ちょっと不気味な感じが私の特徴で、可愛いけどちょっと怖い、明るいけどどこか暗いという、両義的な世界観をテーマにしています。作品自体にメッセージを込めたりはしませんが、私が感じている雰囲気を作品を通して伝えたいと思っています。
倉本:制作の手法について教えてください。
都築:キャンバスにプリントして、そこにレースや布を縫い付けています。画はデジタル版画のようにデジタル上で色を重ねていますが、アナログを組み合わせた特殊な版の描き方をしています。1枚の画につき、シアンとマゼンタとイエローの3色用にそれぞれ鉛筆でモノクロのグラデーションによる版を描き、それらをスキャンしてデジタル上でそれぞれの色に変換し、レイヤーで重ねてフルカラーの作品に仕上げて出力しています。
倉本:すごく手の込んだやり方ですが、そうなった理由は何でしたか?
都築:鉛筆デッサンが得意だったので“鉛筆しかない”と思っていたのですが、イラストレーターとしてやっていくのにモノクロだけでは厳しいので、自分が得意な鉛筆のタッチやグラデーションを色として表現するには、どうしたらいいか試行錯誤を重ねるうちにプリントゴッコに辿り着きました。その後、機械の製造が中止されてしまったので、行程をデジタル化して今の手法になりました。古い写真や印刷物が好きなので、その質感を表現したいというのも理由のひとつです。
倉本:その特殊な工程があってこそ、独特な味が生まれるんですね。
都築:例えば、黒も3色の版が重なって生まれる色なので真っ黒ではないですし、色を重ねることで、版ズレのような効果も出て、立体感が生まれます。さらに違う素材を縫い合わせて、奥行きのある額に作品を入れることで、不思議な存在感が出せるようにしています。
倉本:都築さんは平面だけでなく、布を用いた立体作品も作られていますね。
都築:もともと洋服を作るのが好きで、立体作品は12年ほど前にイラストレーターが縫い物を発表する企画に参加したことをきっかけに作り始めました。平面と立体作品の距離を縮めるために、平面の作品にも縫い付けるようになりました。