光の階段
作品概要
- 制作年
- 2022年
- 素材
- 油彩、キャンバス
- サイズ
- 242mm(幅)×333mm(高さ)※F4
これやんの作品コメント
STORY
倉本:吉實さんは広告のお仕事からイラストレーターへ転身しています。それはどんなきっかけでしたか?
吉實:デザインの仕事がしたくて美術系の大学に進学しましたが、学校の課題やデザイン会社でアルバイトするうちに“向いていないかも”と思い、絵を描く方に力が入るようになりました。卒業してすぐにもイラストレーターになりたかったのですが、食べていくことに不安もあり、広告代理店に就職しました。“いつ辞めようか”と思って働いていましたが、会社の先輩から学ことが多かったですし、クリエイティブを発注する側を経験できたのも良かったです。でも、イラストレーターになりたい気持ちは変わらなかったので、この道を選びました。
倉本:その頃から描きたいものはありましたか?
吉實:私が美術のようなものに興味を持ったのは、中学生の頃に見た芸術家をテーマにしたテレビCMでした。それと同じ頃にNHKの「イラスト入門」という番組でイラストレーターという職業を知り、ポスターやレコードのジャケットなどの身近な絵やデザインに夢中になりました。なので、印刷物になったりして日常的に人の目を楽しませるものを描きたいと思っていました。
倉本:ご自身の作品ではどんなモチーフを描くことが多いですか?
吉實:風景、人物、動物、静物など、いろいろ描きます。今回は部屋に飾ってほしいという気持ちで風景にしました。見る人によっていい風景だな思う人もいれば、ちょっと寂しいとか、状況によって感じ方が変わったり、ずっと見ていられるような、想像が膨らむ絵になっていたらいいなと思います。
倉本:アングルが独特ですよね。
吉實:だいたいは実際に見た光景を絵にしています。その場所を訪れたときの印象を大事にすることもあれば、撮った写真を見返しながら“どこを気に入って撮ったんだっけ?”と不思議に思いながらも新たな興味が湧いて、描くこともあります。自分の気持ちにしっくりくるように手探りで描いているうちに、写実を離れて心象風景になっていきます。絵を見た方に“どういう状況なのかな?”と自由に解釈してもらえたら嬉しいですね。
倉本:吉實さんの作品からは、どこか懐かしさを感じます。
吉實:そうですね。懐かしさや暖かみを感じながらも、どこか寂しさがあるという。陰と陽でいったら陰の部分がある画が好きですね。あまり情感に流されずに、少し乾いた感じで、適度な距離感を意識して描いています。まだ仕事がほとんどなかった頃、自信もない時に絵を見てくれた人が“ちょっと寂しさがあるところが好き”と言ってくれて、すごく励みになりました。その感覚は今でも変わっていないんだなと、思いますね。