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いざなうにく

北奥美帆Miho Kitaoku

作品概要

制作年
2019年
使用素材
ナラ、牛ヌメ革、ウレタンフォームなど
サイズ
750mm(幅)×350mm(高さ)×370mm(奥行き)

これやんの作品コメント

「工芸都市高岡クラフトコンペティション2017」のグランプリ受賞経験もある北奥さん。芸術家でありソファ職人でもある彼女が「SICF20」のために制作したのがこちらのオットマン。人体を目指した椅子として、人の肌や肉感を表現した個性的なルックスでありながらも、人体と同じ反発力を表現した座り心地など、実用品としての高い機能を持ち合わせています。
SOLD OUT

STORY

倉本:藝大のデザイン学科を卒業したのちに、家具や工芸品的な作品を作るようになったのはどういう経緯でしたか?

北奥:最初はグラフィックを専攻していたので、チラシなどを作っていましたが、作ったものが消えていくまでの時間の流れが早いと感じて、せめて10年ぐらいは持つものを作りたいなと。それで金属か陶芸か木で迷っていて、一番死亡事故が少なそうという理由で木を選びました(笑)。

倉本:ソファをはじめいろんなものを作っていますが、この曲げ木の作品は見事ですね。

北奥:ダイニングテーブルを作るときに、天板をちょっと大きめに作ってから、仕上げのサイズに切るときにこのぐらいの大きさの端材が出るんです。この端材が焼却炉の前に山積みになっているのを見て“もったいないなぁ”と思って作り始めました。

倉本:こんなに綺麗に曲がるものなんですね。

北奥:曲げ木の技法は5年くらい研究していて、曲げるための道具作りから始めました。厚みが1ミリ程度の木材なら良いのですが、もっと分厚い木を曲げるのはなかなか難しいですね。ベンディングアイロンと言う道具で曲げますが、大切なのは水分と温度のバランスで、木の成分であるセルロースがやわらかくなるのが約82℃で、万遍なく素材の中心まで熱を伝えつつ、なおかつ水分がある程度残ったコンディションを作ると、こうやってしっかりと曲がります。この技術で作った作品を出品したコンペを見た方から、飾り棚をデザインしたものの、従来の曲げ木の技術では無理だということで、施工を依頼されたこともありました。

倉本:北奥さんの技術力の高さが分かるエピソードですね。

北奥:ただ、この技術を使って完成したのが鍋敷きしかなくて……まだ実験段階のものもあります。美術品でありながらも実用に耐える強さも兼ね備えるという、微妙なところを狙いたいと思ってはいますが、それにはまだまだ技術力が足りないので頑張ります。これからも“神様に見せても恥ずかしくないようなもの”という作品作りの原点を胸に制作に励んでいきたいです。