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ほっ-Touch on the cheek-

鬼原美希Miki Kihara

作品概要

制作年
2019年
使用素材
毛、綿
サイズ
200mm(幅)×200mm(高さ)
特筆事項
技法/つづれ織り

倉本美津留のこれやんコメント

つづれ織りという伝統的な織物をポップな視点で、現代へとアップデートさせた作品を作る鬼原美希さん。「ほっ-Touch on the cheek-」は“触る”ことをテーマにした作品で、鬼原さんが人間が自分を落ち着かせたり考えたりするときに、無意識にほっぺたを触ることで自分のテクスチャーを確かめていることを知り、ほっぺたにフォーカスして作られています。ほっぺたの部分は織ってから起毛させ、触っている感じを視覚的に体験してもらう工夫がされています。この作品を見ると本当に“触りたく”なりますよ!(笑)
SOLD OUT

STORY

倉本:鬼原さんはタペストリー作家ですが、どういう流れでこういうアーティストになっていったんですか?

鬼原:最初はハッピーでポップな子供服を作りたくて多摩美術大学のテキスタイルデザイン専攻に入学したのですが、4年生のとき先生に“自分の好きなことをやってみなさい”と言われて改めて考えて、卒業制作で自分の自画像を制作しました。その時、大学の教室内でアニメーションが流行っていて、おてんばな女の子が朝起きて、食パンをくわえながらダッシュする、みたいな一連の流れを自分に置き換えて、ポップな衣装を着た自分を表現したんです。講評会では、つづれ織りの魅力を作品と同じ服装で歌って踊ってプレゼンをしました(笑)。

倉本:面白い人なんやね(笑)。自画像をつづれ織りで作る人ってそんなにいないですよね?

鬼原:そうですね。私はキラキラしたものが好きで、子どもの頃は宝石とかをチラシから切り抜いて遊んでいました。ところが、ジュエリーでなく糸を織り重ねることで生まれる繊維と色の重なりに、強く深い輝きを感じたんですね。つづれ織りって緯糸(ぬきいと)だけが表に見える技法なのですが、見えないところで軸になっている経糸(よこいと)の存在で、何ともいえない重厚感が生まれるんです。

倉本:鬼原さんはアニメのような世界観をつづれ織りで表現するという誰もしていないことをやっていますが、その後の活動はどう展開していきましたか?

鬼原:その通りで、つづれ織りという伝統的な技法を新しくしちゃおうという発想がはじまりでしたが、実は作品の中で私が描きたいのは“日常の物語”というテーマです。織る行為自体が日々の蓄積であって、それを一枚のタペストリーに仕上げることで、何気ない日常の積み重ねが、かけがえのない大きなドラマを産むを表現できることに気がつきました。アニメのキャラに置き換えていますが、幼い頃の私は実際にあの格好で登校してポップに生きていて……その頃の自分の姿はもう無いんだなと思い、だったらそれを今描かないと! と、思ったんです。

倉本:その後は喜界島で手に入れた素材や島の植物で染めた糸を織り込んだ「オオゴマダラ」のような作品を作るようになりますよね?

鬼原:4年前に船で世界を旅して、各国で出会った素材を織り込み、その国でのエピソードを表現したつづれ織りを作るようになり、これまでに23ヵ国分の作品を作りました。ある日、自分のルーツが喜界島にあったことを知って、実際に行ってみたら不思議と“帰ってきたー!”って気持ちになったんです。その気持ちを、島で出会った素材で表現しました。

倉本:世界中に足を運び、その場所でしか出会えない織物を生み出しているんですね。