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forms #1

田中幹希Motoki Tanaka

作品概要

制作年
2022年
素材
レジン、塗料
サイズ
95mm(幅)×300mm(高さ)×65mm(奥行き)

これやんの作品コメント

匿名性をテーマにミニマルさを追求した彫刻を制作するアーティスト、田中幹希さんがこれやん初登場です。こちらは田中さんの制作プロセスを可視化したformsというシリーズの作品。シリアル・ナンバー#1は、このシリーズで最初に制作した貴重な一品です。髪型や足元からも性別を感じさせないミニマルなフォルムでありながらも、工業的にならない手作りの質感を感じ取れる不思議な作品です。塗料の色はそれぞれの個体の個性であり、垂らすことで生まれる偶然性が、作品にさらなる魅力をもたらしています。
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STORY

倉本:田中さんが彫刻作品を作るに至った経緯を教えてもらえますか?

田中:祖父が映画の編集に携わる仕事をしていて、小さな頃から僕にいろいろ見せてくれていたんです。その中に本郷新という彫刻家のドキュメンタリー作品があり、粘土でカタチを作ったりする作業風景を映像で見て“これが仕事なら楽しそうだな”と思って、大学で彫刻を専攻しました。そこで人体彫刻など具象の彫刻を学ぶうちに、いかに少ない情報で人として見せることに興味を持つようになり、棒一本立てたような抽象の彫刻で、最低限にどんな要素があれば人に見えるか、どうしたらもっとミニマルにできるかを考えていました。

倉本:ミニマルな方向にいったのはどうしてですか?

田中:シンプルで影の少ないものが綺麗だと感じるし、好きなんです。逆に形が複雑だと影が多くなってしまう。あと、立体は裏側があるから面白いなと思いますね。立体としてこう、空間に立っている感じが良いんです。

倉本:彫刻作品にとって重要な影をできるだけ排除していったんですね。それに加えて、田中さんの作品は一貫して目や鼻、口という顔のパーツすら省いています。

田中:幼い頃から人の顔色を伺って、それに合わせていたんです。それもあって学校の授業で顔を作っても違和感しかなかったので、削ってみたんです。顔のパーツがなくても佇まいや印象で表情は出るし、それによって考え方に少し余白をもたせたかった。見る人によって“あの人に似ている”とか“こういうものに見える”とかそれぞれの思いがあり、そこが自分の作品の面白いところだと思っています。

倉本:静態で立ったフォルムには、どんな流れで行き着いたのですか?

田中:身体に動きがあるだけでも表情が出てしまうので、直立不動に立っている感じが一番カッコいいのかなと思って。このフォルムで作りはじめました。手も彫刻的には表情が表れる部位なので出していません。でも、横から作品を見ると膝や肩の位置は崩していないので、そこまで人を模してはいないものの、ちゃんと人に見えるようになっています。 それと、表情がないことで現代社会における“匿名性”のようなものを表わしたいという考えが、作品制作の根幹にあります。

倉本:今回お持ちいただいたのは、彫刻と絵画で同じように塗料を垂らした作品です。

田中:近年制作している作品はしっかりと色をつけ、未来感を重視して構成しています。僕の作品はまず型を取り、プラスチックで複製していきますが、そのプロセスを可視化したら面白いんじゃないかと思って作りました。彫刻も絵画も同じ素材で、同じ色の絵の具を垂らして対比させることで、両者が同一の価値になるのかなと。ただ、複製といっても3Dプリンターなどは使わず、手で作ることでちょっとしたズレや生っぽさを出しています。ペンキを垂らすことで生まれる偶然性もいいなと思っています。この作品は作る回数が増えるにつれて、上手くなっていきますね。型作りをはじめ、制作には1ヵ月くらいかかりますが、一番楽しいのはペンキを垂らす最後の一瞬です(笑)。