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カタクリ

田中里奈Rina Tanaka

作品概要

制作年
2024年
素材
紙に水彩、ペン、切り絵
サイズ
210mm(幅)×300mm(高さ)×0.5mm(奥行き)/イメージサイズ
特筆事項
販売時は額装してお渡しします(作品写真参照)。金額は額代(10,890円)込みの値段です。
販売価格¥69,190(税込み)
販売応募期間:2024年9月20日〜10月20日まで

これやんの作品コメント

絵画のなかで時間の流れを表現するアーティスト、田中里奈先生。植物をモチーフにした新しい作品シリーズをご紹介します。こちらは田中先生が登山したときに見つけた高山植物、カタクリの花です。この品種独特の葉っぱの模様は水彩で描き込んで表現していますが、花にはあえて色を付けないことで形状にフォーカスしています。鑑賞者が花の色をイメージすることで作品の見え方が変化するのもこの作品ならではの魅力です。
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STORY

これやん:今回お持ちいただいた作品は田中先生の新しい作風で、かつ飾りやすいサイズです。

田中:これまで私はキャンバスに油絵具かアクリルで描いていましたが、今回のような小さいサイズが苦手でした。でも、数年前から自分の作風につまらなさと言いますか、同じ素材を使い続けると作品が凝り固まってしまうという不自由さを感じていて。それで水彩絵の具などの新しい素材を試したりしていました。普段からよく散歩をしていて、河原の雑草を見て“綺麗だな”と思ったんです。植物画は花がフォーカスされることが多いですが、私的には葉っぱや茎の色合いのほうが綺麗で、葉脈や葉の形状を見ているだけで楽しくて。そこから身近な植物をモチーフに苦手だった小さい作品として仕上げようと思いました。

これやん:新しい試みの作品を出品してもらえてとても嬉しいです。ちなみに以前の田中先生の作風はもっと感覚的なニュアンスでしたね。

田中:以前の作風は、例えば私が好きな日本庭園をグルっと回ったときに感じる時間の流れを一枚の絵に落し込むといったものでした。絵巻物が山や雲で画面を区切って時間を展開するように、私の作品も意図してひとつの画面を木などを使ってコマ割りにしていました。きっかけは私が幼い頃に住んでいた自宅をモチーフにした作品でした。例えばとある良く知った家の中を描こうとしたとき、目の前にドアがあるけれど、自分はそのドアの向こう側に何があるのかをすべて把握している。それならドアの先の廊下を歩いて階段をくだり下階の部屋に行く、その視点の流れをひとつの画面に収める表現をしたいと思ったのがはじまりでした。

これやん:新しいシリーズは筆で描くだけではなく、切り絵のテイストもあります。

田中:このシリーズは台紙からはじまっています。私は古い地図や本のような質感の紙が好きで、この紙の美しさを生かした作品を作りたいと思いました。切り絵を用いたのは、台紙に直接描くよりも別の紙に描いたものを切って貼ったほうが、紙同士の質感や色の違いが魅力になるからです。それと、切り絵にすることでベースの紙との間にわずかな影ができ、それが作品自体に鋭さとメリハリを生むからです。花の部分はペンで描いたものを貼り、葉は水彩絵具で描いて切ったものを貼って、あとから葉脈などの細かい部分を描き込んでいます。

これやん:写実的なところもこのシリーズの特徴ですね。

田中:確かにそうですね。私自身、制作時に花をじっくり観察しながら細部を描きあげることで、はじめて花の構造を理解できる楽しさがあります。ただ見ただけでは、あとで思い出して描こうとしても描けない、描くことで理解するということです。それとは逆に、例えばタンポポの葉っぱの部分などは、先に水彩絵の具を紙に垂らしてから葉っぱとして切り取ることで偶発的な要素を取り入れています。すべてを意識的にやると予想したものにしかならないので、制作時には部分的に偶然性や無意識的な要素を取り入れるようにしています。

これやん:葉っぱが台紙からはみ出しているところに、二次元のなかで三次元を表現しようとする田中先生らしさを感じました。

田中:それには雑草の生命力が影響しているのだと思います。やっぱり雑草ってすぐに大きくなりますから。私の作品は美大の在学中にお世話になった吉本作次先生の影響が大きく、美術の造詣が深く、古今東西の絵画をこよなく愛する先生から学んだおかげで、私は絵が大好きになりました。それもあって私はキャンバスに絵の具が載っている物質感とか、二次元という不自由さのなかで表現することが好きなんですよね。