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植物の記憶 – Subtle Intimacy-(2019_01)

佐々木類Rui Sasaki

作品概要

制作年
2019年
使用素材
ガラス、国内外の植物(2012年〜2019年)、LED
サイズ
440mm(幅)×840mm(高さ)×14mm(奥行き)
特筆事項
技法/フュージング
販売価格¥(税込み)

倉本美津留のこれやんコメント

海外のコンペ賞歴が多く、インターナショナルな活動を展開するガラス作家の佐々木類さん。「植物の記憶 - Subtle Intimacy-」は植物をガラスに挟んで焼き込んで灰にすることで、顕微鏡でしか見られないようなミクロ世界を映し出した作品です。植物の美しさにフォーカスせずに、植物が生み出す環境を“保存する”という視点で生み出された表現が、結果として美しく見えるという、発想の起点がとても個性的ですね。
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STORY

倉本:ガラスの芸術作品もいろいろありますが、植物や蓄光素材を用いて光を当てることで表現するというのはとても珍しいですね。こういった作風を発想したのはどんな経緯だったのですか?

佐々木:私は“記録”や“保存”に興味があって、それも思い出とか見えないものを保存するのではなく、物質を保存したいと思っていました。ガラスは透明で美しいですが、それよりも私にとっては物質を保存し、記憶させるための素材だと思っています。

倉本:保存という行為が根本にあるんですね。そうなったのはどうしてですか?

佐々木:きっかけはアメリカに住んでいたときに何を見ても懐かしさを感じなくて、まるで幽体離脱したような感覚になったんです。もちろん私は子供からずっと日本に住んでいたので当然ですが、その時に人って“懐かしさ”を感じられないと、物や場所とつながれないことを知って。それも写真とか手紙とかではなく、単純に物質が欲しいと思いました。灰は物質の最終形ですし、これを保存したいなと。

倉本:物質と人が繋がるポイントを、灰を保存するという行為に見いだしたと。

佐々木:でも、最初から植物に興味があったわけではありませんでした。アメリカから帰ってきた時は逆カルチャーショックになって、天井が低いのが気持ち悪く感じたりして日本人の感覚を失っていることを知りました。それで、自分を取り戻すためにどうしたら良いかを考えたら、植物に触れることだなと。子供の頃から私は田舎で育ったので、手で植物に触れて匂いも感じれば、昔の思い出が戻ってくるだろうと。ですから、作品制作の過程が私にとっては大切で、どちらかというと自分のために植物が必要だったんです。

倉本:実際にはガラスの中にどうやって植物の灰を封じ込めているのですか?

佐々木:プロセスを話すと、板ガラスの中に植物を入れて焼くのですが、最初は真っ黒になって段々と白く灰になっていきます。植物は採取した場所の環境を保存していて、例えば空気や水分(雨や湿度)、土の成分によっても植物が含む物質は変化するので、私はそれをガラスを使って視覚化しています。白くなった灰はガラスの中心に光を通すことで灰が透けて、葉脈などの普段なら顕微鏡を使わないと見えないものが全部見えてきます。そこに注目してほしいので、ライトが必要でした。

倉本:それがこんなにも綺麗になるんですね。他にも、蓄光素材を使った作品もありますが。

佐々木:私が住んでいる北陸は曇ったり雨の日が多くて……それで太陽光をどうやって保存したらいいかを考えたときに蓄光ガラスだなと。それで蓄光ガラスの粒を溶かしたガラスに着けて吹いて作っています。

倉本:太陽光を保存しようとしたんや! 作品だけを観たら綺麗・美しいという印象ですが、佐々木さんと実際に話してみたらすごく個性的というか、保存という意識に特化して作品を作っているんですね。