柿
作品概要
- 制作年
- 2019年
- 使用素材
- 陶、銅
- サイズ
- 150mm(幅)×90mm(高さ)×100mm(奥行き)
- 特筆事項
- 壊れやすい作品なので取り扱いには十分注意し柿の実の部分で持つことをお勧めします。
倉本美津留のこれやんコメント
STORY
倉本:こんなにもリアリティのある柿を焼き物で作るには、どういうイメージを持っているのですか?
今井:作りたいモチーフが先にあるのではなくて、素材からモチーフを選んでいます。釉薬のテストをして“こういう色ができたから何か使えるものは無いかな”と、イメージした方がスムーズに作れますね。
倉本:そもそも陶芸の道に入ったきっかけは?
今井:実家が祖父の代から陶芸家で、祖父は象嵌(ぞうがん:陶芸の技法のひとつ)という技術を使って壺を作っていたのですが、それを見ていて何で壺ばかり作るんだろう、と思っていました。でも、実際にやってみると、壺や器は焼き物にすごく合っているというか、形とか技術的にも理に適っていることを知りました。でも、僕はあえて違うものを作ってみたいなと思いました。
倉本:三代目ですか! ちなみに今のような写実的な表現はいつ頃からやられているんですか?
今井:大学一年生の進級展からです。何を作ってもよかったのですが、せっかく陶芸の家系でしたし、電車の枕木を焦がしてその上に、青磁で作ったカニを乗せてみました。その評判がよくて、そこからやめられなくなってしまいました(笑)。でも、結局は実物のような自然な感じにはならないので、モチーフを見たときに人間がそれと思う形であれば良いと思っています。例えば全然柿ではない形でも“これ、柿だよね”と、見る人が思えばそれでいいんです。ですから、人が見たときに“どこがモチーフの印象なのか”を探りながら作る作業は楽しいですね。柿の作品だと、影の部分に金を打っているのが実物とは全然違う部分です。実際に点々が無いよりも、あったほうが生き物らしさが出やすいので、最近はそういう所にこだわって作っています。
倉本:人間が対象物を見た時に受ける印象に、作品が接近しているということですね。せっかくなら本物と比べたときに、本物の方が偽物なんじゃないかって領域まで行きたいですね。
今井:物の雰囲気を写し取る一番の近道は、形を寄せていくという作業なんです。でも、その形を寄せるという作業自体に意味はなくて、本当はもっと別なところが大事なのかなと思っています。
倉本:今井さんが作っている柿や蟹、ウミガメなどの自然界にあるものは、神様の造形物じゃないですか。それにどれだけ人間が作った造形が肉薄するか、その飽くなき挑戦というのは、すごくワクワクしますね。