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ムンク似のささやき

しりあがり寿Shiriagari Kotobuki

作品概要

制作年
2019年
使用素材
キャンバス、アクリル
サイズ
460mm(幅)×540mm(高さ)

これやんの作品コメント

ギャグ漫画家としてはもちろんのこと、アート方面でも精力的に活動されるしりあがり寿さんが、ついにこれやんに登場です! 今回ご紹介するのはイベント「アートと笑いの境界線」にて、会田誠さんとともに即興で描いてもらった作品です。会場のアンケートから無作為に選んだ言葉を組み合わせた「ムンク似のささやき」というテーマで描いてもらったのがこちら。10分という短時間で描いた作品ですが、タッチや色使いが素晴らしく、サッと描いてもすごいものができる境地を感じます。
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STORY

倉本:漫画とは別にアートとして絵を描くようになったきっかけは何でしたか?

しりあがり:やっぱり笑いですね。人を笑わせるのが好きでギャグ漫画を描いていたのですが、それだけでは物足りなくなるじゃないですか? 赤塚不二夫さんが漫画かだけではすまなったように、そうやって漫画を壊していくというかハミ出していく感じはありますよね。そんなこと、やんなきゃいいんだけど……それですよね(笑)。

倉本:漫画には絵とストーリーがありますが、それが単体でアート絵画になったとき、描く際に意識の違いはありますか?

しりあがり:漫画も映画もそうですけど、物語の世界を作って読者を没頭させるものだと思うのですが……アートの中にはなんて言うのかな、そういう風に閉じてない部分があって、場にもっと開かれているというか。絵画と漫画でもっと大きく違うのは、漫画は10万円儲けようと思ったら何冊も売らなきゃいけないけど、絵なら一枚売ればいい(笑)。ということは、好きなお客さんが一人いればいいっていう。そういった自由度もありますね。

倉本:しりあがりさんのアート作品は実験的です。

しりあがり:アートもいろいろやらせてもらっていて、美術館の展示から画廊やデパートで絵を売ったりしています。でも、正直、自分は「アートとは?」と聞かれてもよくわからない。アートにもいろいろあってコンセプトがとぎすまされた純芸術もあれば、インテリアとしてステキなものから、投資目的で買うような作品もあるし、その幅の広さもアートの面白さですよね。その点、僕は昔から頼まれたらやるっていうスタンスで、自分がこうしたいっていうのはまったくなくて……昔にアートって何なのかよくわからなくて本を読んだり、人に聞いたりしていたときに、とある学芸員の方に“作品を描くことがその人にとっていかに重要かが一つの目安”と言われたことがあって。つまり、売れようと売れまいと評価されようとされまいと、作家はこれを描かざるを得ないと思うことが大切だということを知り、“これはしまったな”と。僕、そういうのが全然ないし、締め切りが来たら出しているな、って(笑)。

倉本:そうは言っても、頼まれたどおりにしないのも、しりあがりさんの魅力じゃないですか? きっかけはそうであっても、今までにない新しい作品としてアウトプットしていますし、それがアートにとって一番大切なことだと思います。

しりあがり:そうなんです、新しさですよね。よく例えに出すのですが、アーティストを遠くまで届くサーチライトを持っている人たちだとすると、彼らは人の見えないビジョンを見えているわけじゃないですか? だから、それを世の中に提供する義務みたいなものがあると思っていて。それが見たいか見たくないかは別にして、見えちゃったら、描けってことです(笑)。ところが、“見えた!”って思ったものは、案外他の人がすでに見ていたりもするんだけどね(笑)。僕は勉強不足だから、それが分からないままに描いちゃっています。