Amorphous22-5
作品概要
- 制作年
- 2022年
- 素材
- ガラス
- サイズ
- 170mm(幅)×170mm(高さ)×170mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:ガラスという素材を選んだ理由から教えてもらえますか。
横山:備前で育ち、父親は備前焼の作家をしています。なので、漠然と将来は備前焼を継ぐのかなと思っていましたが、一度外で勉強をしてから備前に戻ったほうがよいと考えました。それで、大阪芸術大学に新しくガラス工芸コースができると聞いて、ためしにオープンキャンパスに行ってみたら、“これは!”と、興味を持ちました。備前焼とは真逆の作業性というか、父親がろくろの前でじっと作業していたのに対して……ガラスの制作はつねに身体を動かしていて。もともと身体を動かすことが好きだったこともあり、溶けて垂れたり膨らんだりするガラスで自分の身体性みたいなものを表現できるかもと思ったんです。それがきっかけでガラスを学ぶために大学に入学しました。
倉本:お父さんへの反発心も多少はあったのですね。
横山:そうですね。それと、産地特有の閉塞感が苦手だったので外に出たいと思っていました。もちろん、戻ってきたときには新しいものを持ち帰りたいという気持ちもありました。ガラスの素材感に魅了されて、卒業後も同じ大学の副手として働きながら、3年間ガラスの勉強をして、そのあと金沢の卯辰山工芸工房に研修者として入って3年間、制作をしました。さらに富山のガラス造形研究所で助手として3年間勤めました。
倉本:さまざまな工房や研究所を転々としているのは技術習得のためですか?
横山:それもありますが、一番の理由は自分の制作環境を整えるためです。僕は比較的大きな作品を作るのですが、大きいガラスを作るには設備と人材が必要なので、その設備がある場所に身を置いて、そこを軸に活動をしたほうが合理的なんです。富山で勤めたあとは多摩美術大学から声がかかり、助手を4年間務めたあとで、非常勤で働きながら制作をしています。
倉本:横山さんが作り出す作品には生命感にあふれていますが、どのようにしてこの作風にたどり着いたのですか?
横山:僕はガラスの流動体としての素材感や、“動いてる”感じがすごく好きで、そこにガラスの持つ生命感を感じています。なのでそれを生かした作品を作りたいと思っていました。自分の内部にある息(氣)みたいなものを使って造形することで、ダイレクトに自分の身体性やエネルギーをガラスに伝えられるんじゃないかと。そうして生まれた作品が、例えば神社で鳥居をくぐったあとの世界のように、そこに転がっている石ですら空間を持っている……そんな何らかの気配のようなものを持った作品になればいいなと思っています。
倉本:流動体のガラスと身体性が、躍動感を生み出しているんですね。
横山:息で膨らませた作品は静かな気配を含んだ物体ですが、今回出品したのはガラスの流動性を生かして、自分の体の動きによってガラスを成形しています。ガラスを何度も練ると空気を含み、繊維状の質感や光沢が出てきます。例えるなら飴細工を折り重ねていくような感じですね。練ったガラスを動かすことでその軌跡がはっきり見えてきます。この作品は動いている間に形を作らないといけないので、ほんの一瞬、30秒くらいの勝負です。制作したなかで作品になるのはほんのわずかで、失敗作はその何10倍もあります。冷やしたあとで作品を見たときに、生命感があって生き物のような気配を感じられたら、作品として成功です。