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夢の光

上渕翔Sho Uebuchi

作品概要

制作年
2023年
素材
シナベニヤにアクリル、古時計
サイズ
315mm(幅)×480mm(高さ)×110mm(奥行き)
販売価格¥49,500(税込み)

これやんの作品コメント

使われなくなった骨董品に絵を描いて作品として生まれ変わらせる上渕翔さんが初登場です。この作品は古い壁掛け時計の文字盤に景色を描いた作品です。柱に付けられたまま動かない時計の奥に、広い景色が開けていたら、という妄想を表現しています。「夢の光」というタイトルには、人々が夜寝ている間に見ている夢が空に昇り、月に届くという意味が込められています。古い時計と夢と月という、鑑賞者に時間の経過を感じさせ、いろんなストーリーを想起させてくれる、素晴らしいアート作品です。
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STORY

これやん 古い木工品に絵を描かれていますが、そうなったのはどんな経緯でしたか?

上渕 古材に描いたのは、昔アルバイトをしていた喫茶店のマスターに“欄間(らんま)があるんだけど描いてみない?と言われたのが最初ですね。もともと古い木工品が好きで、喫茶店の前に中東のアンティークを取り扱うお店で働いていました。そこでアンティークの木の鉢に花を生けたりしていて、そういった古いものに少し手を入れて、生き返らせるという感覚が好きでした。あと……今思い出せば、中学生の頃から古い神社とかを巡っていたので、昔から古い木材でできたものが好きでした。

これやん 木に描く手法は在学中に学んだものでしたか?

上渕 いえ、美術大学を卒業してからはじめました。大学では洋画の勉強をしていましたが、あまりアカデミックな方面の制作はしていなくて、卒業後も絵を続けていきたいと思ったときに、古い道具や木材に絵を描く手法に落ち着いていきました。私のなかでは幼い頃に段ボールに“何を描こうか”と思っていた感覚に戻っている感じもあります。

これやん 最初に木に描いたときの感触はどんな感じでしたか?

上渕 自分の力を引き出してもらったように感じました。先ほどお話しした何も彫られていない欄間を見て、“これに描いて映えるものは何だろう”と思い、自然と登り龍を描きました。これまでキャンバスに描いていたときに登り龍のモチーフを思いついたことは一度もなくて、木に描くことで新しい世界が開けたという感触がありました。

これやん 描く素材となる骨董品は、どうやって手に入れているのですか?

上渕 旦那さんが骨董屋を営んでいて、こういう物が出たら持ってきてとリクエストしています。私は以前に骨董品オークションの事務仕事をしていたことがあるのですが、壊れた壁掛け時計などは二束三文で取引されたり、値段がつかないものもたくさんあって、そういうものを手に入れています。時計や歯車のような分かりやすい古道具以外にも、ただの古びた板に描くこともあります。

これやん 木に描く魅力をどこに感じていますか?

上渕 木目を含めて全部が同じじゃないところですね。描きやすい・描きにくいを含めて面白い素材だなと思っています。まず木を見て何を描いたら一番映えるだろうと考えながら描くので、モチーフもその都度変わります。画材は濃度の調整で木への染み込み加減をコントロールしやすいという理由でアクリルを使っています。作品のなかでどれだけ絵具をつかって自分の考えを表現し、どれだけそのままの木を生かすのか、そのバランスをいつも考えています。とても難しいですが、そこが面白いところなんです。

これやん 上渕さんがやっていることはアートでありながらも、使われなくなった、もしくは役に立たなくなった物に命を吹き込み、新たに循環させているようにも見えます。

上渕 古いものを生き返らせるという意味では、最近自分が付喪神になりつつあるのかなって思いますね。