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作品概要
- 制作年
- 2019年
- 素材
- プライウッド、アクリル
- サイズ
- 205mm(幅)×600mm(高さ)×35mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
倉本:こういった木製のおもちゃを作るようになったのは何がきっかけでしたか?
久保:僕は長年、児童館で子供たちに工作を教えていました。そうすると、子供たちがあまりにも面白いおもちゃを作ろうとするから、“こうしたら、もっといいんじゃないか”っていう感じで、手を加えようとしてしまうんです。それは子供にとってもあまり良いことではないし、それならば自分で作ってしまえば子供たちにいらないことを言わなくてもよいと思ったのがきっかけでした。最初の頃はモノが転っていく木組みのおもちゃに関心があったので、ビー玉とかをコースに入れると動いていくようなものを作っていました。
倉本:それがオートマタと呼ばれる“からくりおもちゃ”へと、作風が変わっていったのはどんな経緯でしたか?
久保:それはたぶん僕が根っから動物が好きだったからです。おもちゃで動く動物を可愛いと思うのは世界共通だし、そういう作品はみんなに喜んでもらえるなと思ったからです。
倉本:僕から見ると久保さんの作品はおもちゃであると同時に、発明品のようにも感じます。例えば、ダービーの作品で見られるような木製のチェーンは本当に珍しいですよね?
久保:そうですね。木は湿気で変形するから、金属と違って精度が出ないんです。だから動力を生むにしても、単純な構造じゃないと難しいと諦めていたのですが、とある日に、児童館で片付け忘れた六芒星のような形の積み木を見たときに、チェーンと回転軸が組んで離れるだけなら、変形の誤差を吸収してくれるはずだということが閃いたんです。それ以来、木製のチェーンでおもちゃを動かせるようになりました。海外のオートマタ作品を見ても、チェーンは金属やゴムを使っていて、木製チェーンは僕もこれまでに見たことがないです。それにチェーンを木にすると木製おもちゃらしい風格も出るし、自分でも作ることができてよかったなと思っていますね。
倉本:まさに世界にひとつしかない芸術作品ですね。作品はどんな風に作るのですか? まず設計図を書いて……。
久保:設計図は書かないです。その代わりに毎日制作メモを取っていて、どういう工具を使ってどんな加工をしたらどうなったという記録を付けています。そうやってすべてを記録しておけば、あとからも“あれはどうやったんだっけ?”となっても知ることができるし、こういうものは作る自分さえ分かればよいんです。これまでに制作したデータがあるので、閃きさえスケッチできれば、あとはどういうふうに動物やモノを動かすかはすぐにイメージできるので、直感的に作ることができます。
倉本:すごいですね。普通、こういう木工の制作物は設計図を書いて、その通りに作りますよね。でも、久保さんは直感的に作られているから、こんなにもストーリー性があって、かつユーモアもあるという作品になるんですね。
久保:こうやって動物を動かす作品を作るようになり10年近くが経ちますが、作家として自分が変化してきたのは還暦を迎えてからなんですよ。ちょうどその頃にとあるグランプリを獲って、今もどんどんアイディアが湧いてくるという。やっぱり人生は60歳からなんですかねぇ。
倉本:え、還暦からですか? それは素晴らしい! これからもどんどんいろんな作品をこれやんに出品してください!