露天風呂
作品概要
- 制作年
- 2024年
- 素材
- MDF、アクリル
- サイズ
- 461mm(幅)×278mm(高さ)×17mm(奥行き)
これやんの作品コメント
STORY
これやん:美術の道に進もうと思ったきっかけは何でしたか?
たかすぎ:中学と高校に所属していた合唱部でミュージカルの発表会があり、そのときに担当していた舞台衣装が物作りのきっかけでした。将来は舞台芸術に関わる衣装デザイナーになりたいと思って美術の予備校に入りました。
これやん:衣装デザイナーを目指してデザイン科へ進学したのですか?
たかすぎ:デザイナーを志していましたが、技術よりも発想の仕方を学びたいなと。それで東京藝術大学のデザイン科は“垣根がなくて何でもできる”ことを知って行ってみたいと思いました。入学時は衣装を作ろうと思ってましたが、大学の授業が面白くてそれがどうでもよくなってしまいました。ドローイングの授業で自分に潜在する表現を知る面白さに気づいて、在学中はできるだけいろんな物を作ってみようと考えました。美術だけではなく作詞や作曲をしたり歌を歌ったり、映像を作ったりしていました。
これやん:そこから今の作風にたどり着いたのはどんな経緯でしたか?
たかすぎ:在学中は表現の幅を広げていきましたが、卒業後に精神を患って一時は何もできなくなりました。そんな状態でもできることを思い、天使の絵を自身の希望として描きました。描くことで自分も落ち着けたし、その絵を外で発表したら観た人が落ち着いてくださる姿を見て、感銘を受けました。この体験が今につながり、作品を作ることは祈りなんだと気がつきました。祈りは誰かの幸せを願うことであって、そんな願いが届くようなサイクルに自分も居続けたい。そういう思いから今の作品が生まれました。
これやん:たかすぎさんの作品から感じる癒やしの雰囲気は、そういった背景から生まれたのですね。
たかすぎ:今の作品は愛と傷をテーマにしています。どんな愛が一番普遍的なのかを考えたら、癒やされることだと思いました。普遍的なことを考えるのは、忙しい現代社会に暮らしていると、どうしても小さいことばかりが気になってしまうからです。だから、私の作品は大きいことを連想できるものにしていて、それを通しての癒やしがあると思っています。
これやん:大きいことを意識することで癒やしにつながると。
たかすぎ:はい、私自身がそう思ったことがありました。病気がだいぶ回復してひとりで伊香保温泉に行きました。お昼過ぎの誰もいない露天風呂、裸で空を仰いだら初めて空が大きいと感じてすごく癒やされました。広い空には山もあり、眼下に街も見えて、裸の自分が広い世界とつながっている感覚になりました。今回持ってきた作品にはどれも小さい女の子を描いていますが、それは私であり、作品を見てくれている人。そこをきっかけに作品の世界に入って何かを感じてもらい、作品を見るたびにその気持ちに戻ってもらえたらと思っています。あと、私は作品を作る前に詩を書いていて、その言葉に含みきらないものを合わせて作品で表現しています。