海獣-岩黒-
作品概要
- 制作年
- 2024年
- 素材
- 檜、漆、岩絵具
- サイズ
- 240mm(幅)×220mm(高さ)×80mm(奥行き)
- 特筆事項
- 箱付き
これやんの作品コメント
STORY
これやん:彫刻家を目指したきっかけは?
白谷:幼い頃から砂場遊びが好きで、手を使った工作が得意でした。絵は僕にとっては画面越しというか、窓の向こうにあるものを作る印象があり、それと比べると立体は実際に触りながら作ることができるので、そのほうが自分にとっては自然でした。あとは高校生のときに彫刻を専門にした美術の先生がいらっしゃって、彫刻の面白さを教えてもらったのも大きかったですね。
これやん:最初から木を彫っていたのですか?
白谷:いいえ、美大在学中は陶器や漆などいろんな素材を試していて、これという作風にはたどりつきませんでした。学生の頃はいろんなコンセプトを複雑に絡めた作品を作っていて……もちろんその面白さもあるんですが、自分が感動するときはもっとシンプルなものが多かったので、そういうモチーフはないかと悩んでいました。きっかけは木彫家の方のアシスタントになったことで仏像彫刻にも携わり、そのときに学んだ技法が今の作品づくりに生かされています。
これやん:折り紙のモチーフで作品を作っていますが、この作風はどんな風にして生まれたのですか?
白谷:僕の作品は日本の伝承折り紙の造形ですが、伝承折り紙は作者不詳で現在まで広く受け継がれています。フォルムも洗練されているのに子供でも折れるという、この一連の流れだけでもすごいことだと思いました。ただ、紙という素材もあり完成して間もないときは綺麗でも、時間が経つと先端がよれたり、色紙の裏側の白が見えてきてしまうのが残念だなと。それなら仏像の制作技法を用いて木を彫って作ったら何百年・何千年も形の変わらないものになるんじゃないかと。それで実際に作ってみたら自分が予想した以上のものになり、安心とか救いという感情を想起させるほどに揺るがない美しさを感じました。
これやん:それが白谷さんが言うシンプルに感動できるモチーフにつながったんですね。
白谷:何というか、規範のなかで生きるのはある意味では安心だし、自分が自分以上の何かになれる感覚もあるのだなと思うんですよね。伝承折り紙のように長く受け継がれているものは、時間の流れに耐えることができるのだと思います。ですからこのモチーフの作品を作るときは、伝承折り紙を編集しているような感覚になることもあります。
これやん:作品を通じて感じ取ってもらいたいことは?
白谷:緊張感ですね。仏像作りで学んだ大きなことに細部に神経を生き尖らせて彫ると、作品全体がまとう空気感が変わるということがあって。僕自身もそういう体験をしているので、それをこの作品でも表現したいなと思っています。