Borderline – type D
作品概要
- 制作年
- 2019年
- 使用素材
- 水引、既存の神棚
- サイズ
- 700mm(幅)×440mm(高さ)×250mm(奥行き)
- 特筆事項
- 扉が開くので、中にお札等を入れることができます。
これやんの作品コメント
STORY
倉本:お坊さんをやられていますが、美大を出てから修行に行かれていますね?
風間:はい、実家はお寺なのですが、継ぐつもりはありませんでした。ですが、日本人として美術をやっていくのであれば、仏教美術は必ずぶち当たることなので、それならばお坊さんになってしまおうと。仏像が特別好きだったわけではありませんが、“大学で学ぶアート”=”西洋のアート”でしたから、勉強するほどに日本人がこれを続けていてよいのかと疑問を持つようになりました。
倉本:もっと日本のアイデンティティがあるんじゃないかと。そこから今のような表現へと至ったプロセスはどういったものでしたか?
風間:宗教的なモチーフを扱いたいと思っていたのですが、日本は美術の世界であっても宗教的な表現だと発表できないこともありました。それで、直接的な宗教ではなく、冠婚葬祭で使われる水引という、宗教の周辺にあるものを使って表現ができないかと思ったのがはじまりでした。水引を用い始めたのは東日本大震災の後で、その頃に文化もある意味で大きな波にさらされていると感じることがありました。神棚の作品以前に平面で制作したもののタイトルは「Ebb」で、英語で“水が引く”という意で、“水引”にもかけています。つまりは近代化の波によって水引の文化自体も衰退していて。波に飲まれたとしても、水が引いたときには違う形で、その文化が残って欲しいと言う思いを込めています。それもあり、ビジュアル的には波紋を意識しています。
倉本:そうなんや! 今の話を聞いてもう一度、風間さんの作品を好きになりました。すごくコンセプトを持った作品なのですね。その水引の表現が馴染んできて、この神棚を使った作品になっていったと。この水引の作品はとてもカラフルやけど、大昔に仏像が出来た当時、すごくカラフルだったのと同じで、神棚も元々これくらい派手やったんちゃうかと思えるような、不思議な感覚になります。
風間:そういう風に自分のなかで妄想してバリエーションを見せていくのはけっこう好きですね。神棚はフォルム自体が好きだったので、いつか使いたいなと思っていました。水引のシートも神棚も、巷にあるものをベースにしていて、あえて特別ではないものを合わせています。その理由は、すでにこれだけアートの歴史もある中で、イチから完全に新しいものは作れないんじゃないかと言う自覚があって。それならば腹をくくり、“既にあるものを”と言う前提で、素材を選んで使うようになりました。その合わせの妙で出来上がるアートでいいかなと。神棚の作品タイトルである「Bordeline」には、古美術と現代アートが切り離されている現状に、橋を渡せる作品になれたらという思い込めています。
倉本:なるほど、話を聞いた上で、”ボーダーライン”の意味がすごくわかりました。風間さんはその壁を崩すきっかけを作りながら、みんなが祈りたくなるようなものを制作されているんですね。