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a face of drops-3-3D

作田富幸Tomiyuki Sakuta

作品概要

制作年
2019年
素材・技法
銅版画雁皮刷り板に貼付け、手彩色、UVレジン
サイズ
200mm(幅)×280mm(高さ)×50mm(奥行き)/額装サイズ
120mm(幅)×160mm(高さ)×15mm(奥行き)/作品サイズ
販売価格¥55,000(税込み)
販売応募期間:2025年7月4日〜8月4日まで

これやんの作品コメント

緻密で独特な世界観を表現する銅版画アーティストの作田富幸さんがこれやんに初登場です。こちらはエッチングという技法で描いた版画に着彩し、上からレジンを加えることで透明感と立体的な表現を追求しています。タイトルにもある“drop(涙)”で顔の造形を表現していて、顔を別の要素で構成するというシリーズの一品です。緻密な点の表現と色彩がさらなる立体感を表現していて、引きこまれるパワーを感じる作品です。
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STORY

これやん:版画を志したきっかけは何でしたか?

作田:美大の受験でずっと油絵を描いていて、ペインティングに飽きてしまったんですよね。それでたまたま版画工房へ行ったときにシルクスクリーンでの制作をみて、機械と一緒に作り上げる感じにカッコ良さを感じました。アンディ・ウォーホールの影響もあり、最初はシルクスクリーンから版画に入っていきました。ちょうど美大生の頃ですね。

これやん:その頃は版画でどんな作品を作ったのですか?

作田:描くのが嫌だったので、写真をコラージュした版画作品を作っていました。その頃、シュールレアリスムに気持ちが向かった時期があって、なかには写真を用いた作品も多くあり、自分も似たことをしてみたものの、写真だけだとコラージュで終わってしまい、自分が思い描くイメージになりませんでした。そこでコラージュにドローイングを混ぜるようになり、今度はドローイングの比重が増えていきました。そういったテイストだと、銅版画のほうが自分の制作にもフィットしました。

これやん:今の作風にはどのようにして至りましたか?

作田:大学卒業後は美術の先生をしながら、コラージュを銅版画で表現した作品を作り続けて、ある程度の評価を受けました。当時の作品は感情を入れ込まないシュールな表現でしたが、それを続けていくうちに自分のやりたいことが分からなくなり、今の作風にたどりつくまで迷い続けました。転機は45歳の頃に在学研修でオランダへ行ったときでした。現地のアトリエで滞在制作をするときもコンセプトが浮かばずに考え込んでいたら、“考えている自分を描こう”と思い、それが自分のなかで腑に落ちたんです。今までと真逆な“感情の表現”ですね。

これやん:なるほど、今描いていらっしゃるのは自画像になるのですね。すごく緻密な作品です。

作田:そうです。私の表現する感情はネガティブなものがほとんどです。今までは自分が分裂していくイメージをストレートに描いていましたが、最近は違う描き方を模索しています。緻密なのは得意技というか、それしかできないんです。私は見たイメージをサッと描けるタイプではないので、緻密に描くしかない。そうすると自然と工芸的な感じになり、その質感が好きなんです。

これやん:作品を通じて伝えたいことは?

作田:私は感情をモチーフにした作品を作っていますが、その感情は誰もが持つものであり、同時に作品を見る人の感情を表現しています。例えば、音楽を聴いて泣ける瞬間には、自然と自分の経験を重ねている……そんな感じに近いと思っています。でも、私の作品はフィクションよりももっとリアルなので、私小説の絵画版だと思って、作品を楽しんでもらえたらと思います。